射手。37話 ページ38
*
「……ん、着いたよ」
「……うん」
丘の上にある、ももちゃんのお墓。彼女以外にもここで眠っている人はたくさんいて。真っ直ぐ進んで1番奥にあるのが、あたしの大切な幼なじみであり親友であるももちゃんのお墓。
ゆっくりとさっちゃんがあたしから離れた。平らなコンクリートの地面は松葉杖でも十分に安定する。そしてそのままももちゃんのお墓へと向かう。ゆっくりと、何かを噛み締めるように。
あたしの隣をさっちゃんも歩幅を合わせながらゆっくりと歩く。ももちゃんのお墓まで少ししかないけど、2人とも無言だ。今は冬で、いつもなら冷たく感じる風も、どことなく心地が良かった。
「……」
「……」
かつん、かつんと松葉杖が立てる音と、あたしたち2人の呼吸の音。それと風の音に、風に乗って少し遠くから訊こえてくる誰かの楽しくてたまらないと言っているような笑い声。
そしてたどり着いた、ももちゃんのお墓。あたしが前に来たときよりも一段ときれいになっていて、春樹さんたちが掃除されたことが明らかだった。お花もきれいなものに変えられていて。
「お線香、しよっか」
お線香を用意し始めるさっちゃん。準備を一緒にできなくて、さっちゃんに任せてしまうことに罪悪感を持ちながら準備が終わるのをじっと待った。
「……ん、できた」
「ありがと、さっちゃん」
「ううん、これぐらいどうしたってことないよ。へーき」
さっちゃんの言葉に微笑みながら、両手を合わせてそっと目を閉じた。
……ももちゃんに、この気持ちが届くことを願って。
※
ももちゃんへ
久しぶりです。お元気ですか?
最近来れてなくてごめんね。
大規模侵攻があって、2週間くらい眠ってたから。
……これ、誰にも言ってないんだけど
実はあたしね、あのまま死んでも良かったの。
大切なもの全部守れたから、もういっかって。
でもね、寝てる時に声がしたの。
「起きて」って。「起きなきゃダメ」って。
あれってもしかしたら、ももちゃんだったりする?
……ううん、絶対ももちゃんだ。
ありがとう。
あたし、もう過去に縛られるのはやめたんだ。
前を向いて、歩いて行く。
ありがとう、ももちゃん。
ずっとずっと、だいすきだよ。
あたしの幼馴染で、親友でいてくれて、
本当にありがとう。
151人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
受験生 - こんばんは、高校受験をあと一週間後に控えた受験生です。はい。なにやってんだ。勉強しなくちゃいけないのがわかってたけど、読み進める手が止まりませんでした。私も夢主みたいに乗り越えていきます。たくさん勇気を貰いました。ありがとうございました!!! (2020年2月24日 22時) (レス) id: 61c0c59d71 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» そうなんですね!これからもよろしくお願いします! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 私は15年しか生きていない高1です。(笑) (2018年8月1日 20時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» ありがとうございます!はい笑、まだ16年しか生きていない高1です……笑。コメントありがとうございます!これからもがんばりますね! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 完結、お疲れ様です!!高校生だったんですか!?これからも頑張ってください (2018年8月1日 17時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:岡本珠里奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hsjkei1/
作成日時:2018年3月25日 18時