太刀川隊のもう１人の射手。season５

射手。３１話 ページ32

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長い沈黙。初めて知ったさっちゃんの気持ち。……そっか、さっちゃんも怖かったんだ。なのに、あたしは自分のことばかり考えて、結局 自分だけが不幸だと思い込んでさっちゃんに酷い態度をとっちゃってたんだ。

そう考えると、いっちょ前に被害妄想ばかりしてさっちゃんの気持ちを何も考えていなかった自分に呆れた。さっちゃんもつらかった。哀しかった。苦しかったんだ。

……それでも、笑ってくれてた。それはあたしのためだったんだ。ももちゃんのお葬式の時はあたしは泣きじゃくっていたから。短かった彼女の人生。わずか１０歳で散ってしまった命。これから先一緒に大人になっていけないのだと分かったとき、あたしの目から零れ落ちた大量の涙。それを、さっちゃんは見ていたんだ。



「……っ、さっちゃ、ごめ……、」



あたしはなんて身勝手なんだ。都合が良すぎるのにも程がある。泣きじゃくっていたあたしの肩に手を置いて抱きしめてくれたよね。その時のさっちゃんの手は微かに震えていて。それでもあたしに涙を見せないように、強がるように口角を上げて、「A、だいじょうぶだよ」って言って笑ってくれたよね。

「私がももの代わりにAの側にいるよ」って、「ももの代わりに私がAを守る！」、「だいじょうぶ。ずっと一緒だよ」って、なかなか泣き止まないあたしにいろんな言葉を掛けてくれたよね。塞ぎこんでた時も、毎日あたしの家に来て、笑わせようとしてくれてたよね。



「……ごめんなっ、ざいっ……！！」



それなのに、あたしはさっちゃんに何をしていたんだろう。夢を見て、それがさっちゃんの本心なんじゃないかと不安に思って、勘違いして。さっちゃんを疑ってしまった自分が恥ずかしい。

優しさを一番分かっていたのはあたしじゃないか。不器用な彼女は言葉じゃなくて態度で示す。その些細なことで何度救われてきたのか分からない。……それなのに。あたしはそんなさっちゃんを疑い、嘘を付いた。さっちゃんはいつだってあたしを信じてくれていたのに。



「……夢を、見たの。広い草原で、ワンピース着ててね……、あたしとさっちゃんとももちゃんが笑っていた。すごく楽しくて、ずっとこのままこの時間が続けばいいのに、って思った」

「……」

「……そしたらね、さっちゃんがあたしに“あんたなんか居なければ”、“あんたなんか友達じゃない”って言ったの。夢だって解ってた。……でも、さっちゃんが本当にそう思ってたらどうしよ、って……怖かったの」



ぽつりと漏れたあたしの気持ち。

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