射手。28話 ページ29
*
「これ……」
「げんきくれた!ありがとう!」
にこにこ笑う百音ちゃん。力が入らない右手を必死に動かしてミサンガを受け取った。さっちゃんとお揃いで作ったミサンガ。ももちゃんのお墓にもお揃いで置いてある。
あたしは水色と白のストライプ、さっちゃんはオレンジと白のストライプ、ももちゃんはピンクと白のストライプ。
「本当にありがとう、百音を助けてくれて」
何度も何度も頭を下げてお礼を言う春樹さんと萌歌さん。……あたしは大したことやっていないのに。そんな思いが顔に表れていたのか、萌歌さんはくすりと笑った。
「人を命がけで救うのって、すごく勇気がいることなの。最後まで守り続けるのも同じ。……だから、もっと自信持っていいの。少しくらい天狗になってもいいんだからね」
「……善処します……」
「うん、ぜひしてください」
にこにこと笑う春樹さんと萌歌さん。
「長居して悪かった。……じゃあ、また来るな」
「あっ、来てくださってありがとうございました、!」
「また来るね〜」
「ばいばい、!」
あっという間に帰って行った春樹さんたち。……嵐のような人だったなぁ。というか、大規模侵攻から目覚めていろんなことが立て続けに起こってる気がする。……うん。
そんなことを思いながらゆっくりと顔を動かして窓の外の景色を見た。雲ひとつない晴天。……あ、飛行機雲だ。ばさばさと音を立てながら飛び立つ鳥。近くに公園があるからか、子供の元気な声がたくさん訊こえてくる。
いろんなことをぼーっと考える。……いろいろあった。なんかいろいろありすぎて頭が少し混乱してる。少し落ち着かなきゃ。……でも、そんな頭の中でまとまってることが1つだけある。それは、
「……さっちゃん、」
……会いたい、と微かに声が出る。大規模侵攻が始まる前に、公平先輩のことで相談に乗ってもらった。あたしはさっちゃんに何個も隠し事してるのに、真剣に考えてくれていた。
いつだってあたしの近くにいてくれて、あたしの味方をしてくれて。さっちゃんが笑ったらあたしも嬉しくなって、さっちゃんが落ち込んでいるのを見たらあたしが悲しくなっちゃって号泣しちゃって。
さっちゃんに頼りきっちゃっている部分も多くて、あたし1人じゃ何もできないことも多くて。あたしが立ち止まっていたら、横に並んで一緒に歩いてくれるさっちゃん。あたしのことを考えてくれて、ダメなことはちゃんとダメって言ってくれて、嬉しい時は一緒に喜んで悲しい時は一緒に悲しんで。
あたしの隣には、いつだってさっちゃんがいた。
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受験生 - こんばんは、高校受験をあと一週間後に控えた受験生です。はい。なにやってんだ。勉強しなくちゃいけないのがわかってたけど、読み進める手が止まりませんでした。私も夢主みたいに乗り越えていきます。たくさん勇気を貰いました。ありがとうございました!!! (2020年2月24日 22時) (レス) id: 61c0c59d71 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» そうなんですね!これからもよろしくお願いします! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 私は15年しか生きていない高1です。(笑) (2018年8月1日 20時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» ありがとうございます!はい笑、まだ16年しか生きていない高1です……笑。コメントありがとうございます!これからもがんばりますね! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 完結、お疲れ様です!!高校生だったんですか!?これからも頑張ってください (2018年8月1日 17時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:岡本珠里奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hsjkei1/
作成日時:2018年3月25日 18時