射手。24話 ページ25
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「人の波ではぐれたとわかったとき、急いで引き返して捜しに行ったんだ。……でも、どこを捜しても見当たらなくて。正直、また4年前のことを繰り返すのかと思ったよ。なんで俺たちがこんな目に遭わなきゃいけないんだって、心の底から恨んだよ」
「私も必死に百音と春樹さん捜してて。……でも見つけられなくて。百音まで失っちゃったって思ってたの。死者は0人だって言うからボーダーの方に尋ねたら、カチューシャつけて紫色の洋服着てた男の子が百音を連れて来てくれて。そして、ずっと守ってくれてた人がいるって訊いたの」
まさかAちゃんだなんて思わなかったけどね、と言って笑う萌歌さん。春樹さんもうなずいている。気がつけば涙は止まっていた。
……カチューシャつけて紫色の洋服着てた男の子って、米屋先輩のことだよね。あっ、そこのときにあたしのことを言ったんですね、と1人で納得。
「病院に入院してるって訊いて、百音を守ってくれたからなんじゃないかって思って治療費を全額負担する気でいたの。でも、ボーダーが負担してくださるって訊いて。春樹さんと2人で話して、百音の命の恩人さんだから私たちにできることをしようってなって、」
「とりあえず目覚めるのを待ってたんだ。それから訊いてなんでもしようと思って」
そうさらっと言う春樹さんと萌歌さんに思わずずっこけた。……なんか抜けてるなぁ、この夫婦。そうさらっと治療費全額負担って言える……!?そりゃまぁ大事な
……うん、あたしも何も言えないな。
「……さ、A。俺たちにできることがあれば言ってくれ」
「え、今言うんですか……!?」
「なんでもいいぞ〜。なんでも叶えてやる!」
昔から子供にとことん甘い春樹さん。小さい頃は遠慮なく甘えていたけど、今のあたしは14歳。恥という言葉を知っている年頃だ。いくら幼馴染のご両親だからと言ってそんな……。そう思っていると、1つ考えついた。……あるじゃん、叶えてほしいこと……!!
「春樹さん、萌歌さん。……ももちゃんに、逢いに行ってくれませんか?」
あたしはしっかりと2人の顔を見てそう言った。……ももちゃんも春樹さんや萌歌さんに来て欲しいと思っているだろう。4年も両親の顔が見られないなんてそんなの悲しすぎる。妹もできてるんだ。顔も見たいだろうし、声だって訊きたいだろう。……だから。
お願いします、とそう声に出すと、あたしの頭を春樹さんが優しく撫でた。
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受験生 - こんばんは、高校受験をあと一週間後に控えた受験生です。はい。なにやってんだ。勉強しなくちゃいけないのがわかってたけど、読み進める手が止まりませんでした。私も夢主みたいに乗り越えていきます。たくさん勇気を貰いました。ありがとうございました!!! (2020年2月24日 22時) (レス) id: 61c0c59d71 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» そうなんですね!これからもよろしくお願いします! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 私は15年しか生きていない高1です。(笑) (2018年8月1日 20時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
岡本 珠理奈(プロフ) - いろえんぴつさん» ありがとうございます!はい笑、まだ16年しか生きていない高1です……笑。コメントありがとうございます!これからもがんばりますね! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 05e4939074 (このIDを非表示/違反報告)
いろえんぴつ(プロフ) - 完結、お疲れ様です!!高校生だったんですか!?これからも頑張ってください (2018年8月1日 17時) (レス) id: c175a64265 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:岡本珠里奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hsjkei1/
作成日時:2018年3月25日 18時