エンドオブストーリー

〇45__場違いな意思表示 ページ45

「場違いな意思表示をしてもいいですか？」


噴水を眺めながらちょこんと左手を上げたテヒョン君に「どうぞ」と機会を設けると、両膝に手を当てて体の向きを変えた。
何となくそうした方がいい気がして、向かい合わせになるよう私も体勢を整えた。



「僕はAさんのことが好きです」


しっかりと意志を持った声がそう告げる。

多分、私の目はテヒョン君に負けないぐらいまん丸だ。
咄嗟に視線を落とすと、骨ばった握り拳が二つ。


「でも、答えを求めるつもりはありません」


一段と力強く握り締められるその手を見て、胸が痛んだ。

テヒョン君は答えがわかっていて、わかった上でそうしている。


「さすがにいつかは欲しいですけど」とお茶目に話を続けるテヒョン君に、私は何も言えない。


「ただ、」

そこで一呼吸置いたテヒョン君の顔をもう一度見上げる。
その表情に、初めて教室に顔を出してくれた時のことを思い出す。


「わがままを言うなら、一番近くにいたいです」


大きな瞳が少し揺れた。

二人が遠くへ行って、繰り上げ方式でテヒョン君との距離が縮まった。
だから、その願望はもう既に実現されている。

それに、今はテヒョン君が側にいてほしい。
けれども。
私のいてほしい動機も現実も、全てが不純すぎる。



「何か言ってください」


はっ、とした。

「僕ばかり喋って」とそっぽを向いたテヒョン君の手首を慌てて掴む。
どうしてそうしたのかはわからない。



「………筋弛緩法」


「え？」

戸惑うテヒョン君の拳に手をかけて折り畳まれた指と手のひらの間に指を滑りこませると、それは簡単にほぐれた。


「緊張してるから。テヒョン君も、私も」


ぎゅっと自分の両手を握り締めてから、それらをゆっくり広げて息を吐く。
すると、テヒョン君も同じように深呼吸をした。


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