■ ページ5
*
「悪魔、天使、終末。……どうにも理解し難いことばかりです。……あ、いえ、貴女の説明が難解であったという訳ではありません。ただ、これまでの現実と乖離し過ぎていて……そう、現実感が乏しいのです」
「ですが、ええ。現実なのでしょう。あの苦痛も、今ここにある感覚も。あなた方の存在も、天使とやらの存在も。人類が、終わりかけていることも」
「天使を殺す。……それが正しいと仰るなら、そうしましょう。俺のような一介の事務職が、戦闘において役立つのかは分かりませんが」
「悪魔と契約して蘇り、天使を殺し続けること。天使に殺されたまま、ただの死体として転がっていること。……どちらがしあわせだったのだろう。……考えても、仕方がないか」
「お母様、どうかそう怒らないで。俺は大丈夫。ほんの少し頬を掠めただけだから。な、お母様。俺は俺に優しく微笑んでくれるお母様が好きだよ。怒っているお母様は、少し、怖いな」
「お母様、お母様、……お母様。……ん、ごめん。少し呼び慣れないな。繰り返せば、ちゃんと慣れるだろうから、もう少しの間許してくれるか？」
「お母様。あそこの天使、俺達に気付いているだろ。……手伝ってくれるか、お母様？ 俺ひとりでは、流石に無理だと思うんだ」
「俺が盾になります、下がって下さい。問題ありません。もしかすると重傷になるかもしれませんが。それでも、後ろに下がることは致しません。──……ここで、耐えます」
「……お見苦しいところをお見せしてしまいましたか。このスーツケース、結構重いんです。平坦な道なら転がせるのですが、こうも瓦礫まみれで乗り越えながら進まねばならない道だと、持ち上げなければ運べなくて。こういう時、自分に与えられた能力は便利だと感じます」
「──っ！ ……だい、じょうぶです。自分を軽くして、勢いを流せたので。そこまで酷くはありません。まあ、幾つか骨は逝ったと思いますが。タイミングが良かった。能力が無ければ、恐らく内臓が破裂していたでしょうから」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
元素(プロフ) - CS提出ありがとうございます……重い……重いよう……つらいよ……なんで……？ 不備等ありませんのでこのまま受理させていただきます！幸せになってくれよ…… 今後も当企画をよろしくお願いいたします！ (2022年6月16日 21時) (
レス) @page14 id: 656d2fa00c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アカツキ | 作成日時：2022年6月15日 22時
