赤ずきんちゃんごっこ2 ページ10
「まあ、確かにオレは、推薦も教師の評価もそこまで必要ねえよ。そもそも素行良いしな。一哉と違って」
「あは。ラフプレーヤーが素行良いとかウケんね」
原がビョン! と花宮の右肩に顎を乗っけて乱入してきた。
花宮はそれを読んでいたように、軽く頭を左へ傾けるだけで済ませる。
ちなみに原は、気分が乗らない時にはまるで授業に出ないので、出席日数がイエローカードであった。通知表には必ず「素行不良」と書かれ、全国の高校バスケットボール選手が描く「霧崎生」にもっともイメージの近い男である。
「部活なんて、青春の象徴なのにね。なーんでおばあさんは、良い子ちゃんみたく汗水垂らしてバスケしてんの?」
「バアさん言うのやめろ。次言ったら殺す」
「やーん。赤ずきんちゃんゴッコでしょ。ちっとは優しくしてよねん。なんて言うかよバァーカ」
「は? うざ」
コットンキャンディーみたいな原の髪が、笑う度にパサパサと音を立てた。花宮は心底うざったそうな顔をして、虫でも払うように顔を背ける。
「人生100年時代、今のうちから色んな経験積んだ方が後のためだろ」
「えマジ? そんな理由でバスケしてんの」
「スポーツって手軽なチェスだしよ」
「スポーツを戦争ゲーと一緒にすんなって感じ」
「テメェこそチェスを戦争ゲーとか言うなバァカ。高度な戦略を練るための脳トレだろ」
「やってることほぼ一緒じゃんか。花宮の場合はさ」
「それは否定しねえ」
「まあ冗談はともかく……」
「あ、今の冗談だったんですか」
Aは思わずツッコミをいれた。
あんまりにもスラスラ言葉がでてくるものだから、本当にそうだと考えて言ってる物だとばかり思っていた。
「ま楽しいもんだぜ、バスケって。「部活動」なんだから、ほとんどお遊びだしな」
「キッツ。ごめオレ、花宮からそういう言葉聞けないカラダんなっちゃったわ」
「オレも言ってて吐き気してきた。オエ」
「無理無理むり。見て、鳥肌たった」
「おお。ふはっ、北京ダックにして食うか。なあAオイコラ」
にこーっと綺麗な笑みを浮かべた花宮は、高校生とは思えない迫力があった。
脅し慣れしている。いやな慣れ方だった。
「たかだか部活。それをお遊びとしか思えねーから、そんなんに熱中しちゃう良い子ちゃんがキショくて仕方ねえんだよ」
「部活で人生終わるわけじゃないしね。負けても、だから何? みたいな。あは。負けてガチギレするヤツ気持ちわかんねー」
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作者名:リネン | 作成日時:2022年5月17日 1時