シンプルな解答 ページ16
「つまりだ。狭い世界の中で、自分が何に生かされてンのかも気づかずに、なんで部活できてんのかも気づかずに、必死こいてチンケなことで悩んでる奴らが気に入らねえから壊してる。シンプルに。身の毛もよだつほど嫌いだからな。ラフプレーをやめねえ理由なんか、そんだけだ」
「……そう、ですか。でも、それは……」
もし、それが本当なら。
Aは、花宮のことを悔しく思った。
そんな冤罪まがいのことがきっかけで、高校バスケプレーヤーの大半を敵に回すことになるなんて。
それは割に合わない、とAは思う。さっきには、暴力事件にすら巻き込まれそうであったのに。
Aが寂しげに眉を下げると、対して花宮は、突き飛ばすように笑った。
「ふはっ! テメェ、何を期待してんだよ」
「……え?」
「さっきも言っただろ。お前のその狭い世界で、オレを語んなってよ。勝手に想像を膨らませんなっつってんだ、バァカ」
「そ、想像って」
「なあAよォ。今の話、どこまでが本当だと思う?」
薄い唇を吊り上げて、それこそ今際の死神のように、花宮はうっそり笑った。嫌な笑みだった。
「お前、なんで自分にだけ、オレが本当のことベラベラ話すと思ったんだ?」
「え、……え?」
「人ってオモシレーよな。自分のことは根拠もなく特別だと思ってる。自分にだけは、真実を教えてもらえるンだって。親切にされることになんの疑いも抱かねえ。……っく、クク……!」
「……え! い、今の、嘘……なんですか……!?」
「さあ? どうだろうな。答えなんか、わざわざ教える訳ねえだろ。バァーカ」
真っ赤な舌がベロリと踊って、何だかもうそういう妖怪みたいだった。
Aはあまりの出来事に、処理が追い付かない。
ただ呆然と目を見開いて、信じられないように花宮を見つめるだけである。
「ふは、ハハ! どうだよ。折れたくなったか?」
花宮は、いつかのAが提案した根比べゲームのことを指してそう言った。
愉快でたまらない! と言う顔で、全力でAをイジメにかかってくる。
「……花宮君、どこが「年中無休で悪童やってるわけじゃない」なんですか……」
「ハ。いい社会勉強になったろ? こういうヤツだっているんだよ」
「オレみたいな、どうしようもねえ悪党だってな」
終わり←怨恨と、軽蔑
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作者名:リネン | 作成日時:2022年5月17日 1時