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一歩前進、二歩後退ー7 ページ46

「でも、練習が……」

「はあ? この状況で練習とか言っている場合じゃないでしょ。予報見る限り、あと数時間は雨は止まない。このまま道なりに走って、最初のホテルに入ろう」

「……うん」

とはいうものの、県道を外れた田舎道、ビジネスホテルがあるはずもなく。

代わりにあるのは……目立つカラフルなネオンと、『ご休憩 ―――円 ご宿泊 ―――円 サービスタイム ―――円』と書かれた看板を掲げる昭和レトロな建物。

ちらっと横目でゆづを窺うと、小難しい顔をしている。
潔癖なゆづには縁のない場所だ。

だけど、ホテルを探して30分近く経った頃、ゆづが言った。

「A、次のホテルに入ろう」

「え、次って……」

「あれ」

ゆづが顎で示した先には、昭和レトロではなく、オシャレな外観の建物。ただ、例の看板はある。

「えっと、あのホテルは……」

「知ってる」

「本気?」

「だって、これ以上探してもないでしょ。俺と同じ部屋に泊まるのは怖いなら、やめるけど」

怖くはない。ゆづと私の間に過ちが起こるなんてあり得ないから。

そうじゃなくて、むしろ―――

「ゆづを穢してしまいそうで、怖い」

「……あのさ、俺をいくつだと思ってんの?」

「じゃあ、ゆづは行ったことあるの?」

「ない。これも社会勉強だろ」

えー、そういうもの……?

「とにかく、俺は疲れた。シャワー浴びて、眠りたい」

「わかったよ」

ゆづに大袈裟にため息をつかれては、了承するしかなくて、私はハンドルを切った。


 
 
「意外と、綺麗じゃん」

幸いなことに、部屋は清潔でゆったりと広く、この手のホテルにありがちな妖しい照明もなかった。

「そうだね」

もちろん、ベッドは一つだけど。
顔を見られずにチェックインできるのは、ありがたかった。

「お風呂も広いな」

物珍しいのか、ゆづはあちこち見て回っている。
よかった、この雰囲気なら変に意識しなくて済みそう。

ベッドサイドに置いてある避妊具はさすがに気まずいので、ゆづの目を盗んでそっと隠した。


「テレビでも観ようっと」

「あ、」

待ってという言葉の前に、ゆづがリモコンでテレビを点けた。

途端に大画面に映し出されたのは、大人の、大人による、大人のための……ほにゃらら。

「―――う、わぁ……、ごめん!」

めずらしく慌てふためいたゆづが素早くテレビを消す。

「………、……」

「……………」

一気に、重苦しい空気になった。


 
 
 

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設定タグ:羽生結弦 , フィギュアスケート   
作品ジャンル:恋愛
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エミル(プロフ) - ころねさん» キュンキュンしてもらえて、嬉しいです♡ すっかり可愛い羽生さんになってしまいましたが、しばらくこの状態が続きます(笑) (2022年11月28日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ころね(プロフ) - うわ〜キュンキュンします♡赤面する羽生さん、かわいすぎる(^^)でももどかしい! (2022年11月28日 22時) (レス) @page37 id: 800fd7d527 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 二人の距離が縮まればいいなーと思いつつ、書いていますが……まだしばらく友達の予定(笑) (2022年11月18日 22時) (レス) @page27 id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - わぁぁ…ここで待て!ですか!!どうなっちゃうの?気になる〜〜 (2022年11月17日 22時) (レス) @page27 id: 9bf38dcb2c (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 璃子さん、ありがとうございます。ライビュは大きな画面で羽生さんを観ることができるのがいいですよね。ドアップになるたび、変な声が出そうになるけど(^_^;) 可愛い羽生さんは、書いていて楽しいです。しばらく恋に翻弄されてもらう予定(笑) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミル | 作成日時:2022年10月25日 21時

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