ep.23 ページ25
その様子を想像してしまって身震いする。
…大丈夫。
今ここに巨人はいない。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
すると、周りの会話が耳に入るようになった。
『あれ、エミリ・ヴァルトだろ？人類最強の女版の』
『ああ。だが、今回の壁外調査から外されたらしい』
『マジかよ。なにやらかしたんだか』
『さあな。だがかなりの戦力を置いていったんだ。今回の壁外調査は死人が多いだろうな…』
後ろで、数人の男達が話しているのが聞こえる。
(人類最強の女版？この世界の私ってそんなに強いの？)
確かに、綺麗に絞られたこの体にこの体力。
見よう見真似でやってもそこそこ出来てしまうセンスの良さ。
並の人間とは思っていなかったが、まさか女版とまで謳われているとは。
「…平凡な私と大違い」
何をやっても並程度の実力しかなかった私と似ても似つかない“私”。
そうか。
中身が、平凡な方の私になったから壁外調査メンバーから外されたんだ。
(…ああ、また凹む…)
いや、ダメだ。
集中しなきゃ。
みんなと約束したんだから。
任務を全うするって。
こんなんじゃ、命懸けて戦ってるペトラ達に申し訳が立たないじゃない！
気持ちを入れ替えて活を入れるため、両頬を強くたたく。
「いっ…！」
思った以上の痛みに襲われ涙目になる。
さすが、人類最強の女版。
想像していた衝撃とまるで違うや。
じんじんと痛む頬を手のひらで包み込んで目を閉じる。
「…よし」
頑張ろう。
彼らが帰ってきたとき、胸を張って迎えられるように。
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作者名：勾 | 作成日時：2019年2月7日 17時
