酸いも甘いも好きのうち (ページ8)

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｢なぁ、A……“恋”ってなんだか分かるか？｣

オレはヴォンゴレを口に運びながらここに来るまでずっと心の中にあった蟠りの原因を尋ねるように口にする。

彼女は“恋”という物が分かるのだろうか。

＿分かったら分かったで少し複雑な気持ちだ。

｢…うーん…難しいなぁ……やっぱり、何をするにしても、相手の事を想っちゃうのが恋かなって思う。例えば、この料理を食べたら一緒に食べたいなって思うし、綺麗な景色を見たら、一緒に見たいなって思う。……綺麗な花を見たら、あげたいとも思う。いつもどこか頭の隅にその人がいて、そういう小さな些細なことでも、相手と一緒にしたい、共有したい、一緒にいたら楽しい、安心するって思うのが“恋”だと思う！もっと何が好きかとか、どんな顔をするのか、そういうのも気になっちゃうの。“恋”って。私はそういうものだと思ってるよ。｣

頬杖を付きながら恋する少女のように、頬を高揚させながらロマンチックに彼女は語る。

オレはそれをただ呆然と眺めていた。

＿思い当たる節がありすぎる。

この窓枠に飾られている花だって、オレが綺麗だから早く見せたいと思った。共有したいと思った。それにそもそもだ。オレは彼女と会った時から彼女の事を知りたいと思っていた。それは最初、いつもの探究心からくるものだと思っていた。だが、彼女の言葉でその感情の意味がすとんっと落ちた。

｢メローネ？どうしたの？暑い？顔が赤くなってる。｣

彼女が心配するように顔を覗き込んでくる。やけに心臓の鼓動がうるさい。

そうか、オレは最初から＿会った時から＿

｢もしかしてオレ……最初からAに惚れてたのか？｣

｢……へっ？｣

オレが彼女に向けていた感情は最初から“恋”だった。ずっとずっとオレは彼女を好いていた。愛していた。

それに気づけなかった、分からなかった自分の事を今更ながら恥ずかしく思う。

｢A、オレは君の事を＿＿｣

正直に言おう。例え彼女に想い人がいたとしても、こんな素晴らしい感情に蓋をしては駄目だ。

そしてオレは今まで本当に言いたかった言葉一つ一つを噛み締めるように告げる。

春風が吹いて、あの時の甘い匂いがまた鼻腔をくすぐりながら、窓枠に飾られていた今の彼女の様な真っ赤なチューリップが鐘を鳴らすかのように揺れた＿

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赤のチューリップ＿西洋の花言葉
【愛の告白】

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