酸いも甘いも好きのうち (ページ4)

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『恋』というものはイマイチ分からない。

今まで性別の性で女と何度か関係を交えたことはあったが、1度きりだった。何度関係を交えても、何も想えず、｢つまらない｣という感想しかオレの心には無かった。1度も相手に感情など抱いたことはなかった。

どんなものなのか本や映画を何度も見たが一切分からなかった。登場人物によってその感情は様々で、分かりようがなかった。

まぁ仕事上そんなものは必要ない。そんなもの知らなくても生活に支障が出るわけでもない。オレはそれから『恋』というものについて考えなくなった。

……これから会う彼女へ向ける感情が『恋』なのかどうかは分からないが、オレにとって大切な存在だという事は理解出来ている。

｢はい！出来ましたよ。｣

｢グラッチェ。……綺麗だな。チューリップか。｣

中々この店員、センスがいい。
真っ赤な可愛らしいチューリップはどこか彼女の事を想像させる。

花には興味は無いが、ベイビーフェイスの教育に図鑑は使ったりするから名前と見た目は覚えている。

そう感想を洩らすと店員はにこりと笑って頷く。

｢はい。今の時期が1番綺麗に咲くんです。それに……｣

店員は何かを言いかけたが、｢なんでも無いです。｣と言う。

何を言いかけたが気になるが、正直少し急いでいる。深くは聞かないことにした。

オレは店員に金を渡そうとしたが、やんわりと断られる。

｢今回は特別です。なのでまた今度いらっしゃってください。｣

この店にしてよかった。店員の言う通りまた利用しよう。オレはそう心の中で思い、再び足を動かした。

風でチューリップが揺れる度、ふわりと花の匂いがする。

この匂いを嗅ぐと、あの頃を思い出す。そうだ。確かあの時もこんな天気だった。彼女と出会ったあの時も＿＿＿

｢クソ……ギアッチョめ。変なところがお節介なんだアイツは……｣

教育の為にアジトに3日ほど引きこもっていたオレは、ギアッチョに追い出されてしまい、仕方なく外を意味もなくぶらついた。

その時の肌を突き刺すような眩しい太陽光はオレを苛立ちさせるのには充分だった。

まぁいい。こんな酷く晴れた日は馬鹿な女がわんさかいる。何もしないのもつまらない。

鼻腔を突き刺す程に香水を振り撒き、己の武器を見せつける。オレにとってはそういう女は好都合だ。

適当な女でも捕まえて帰ろう。

そう思ったその時、1人の女がふわりと優しい花の匂いをオレの鼻腔をくすぐり、横をとおりすぎた。