留年組のキスシーンとその先【朔間零】 (ページ1)

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４月の半ば。プロデュース科としての仕事もいくつか任せられるようになって、慣れてきたものも出てくるようになった。

そのうちの一つ。２時間目あたりの佐賀美先生の呼び出し。

「こいつら授業に全然でないんだよ。連れてきてくれるか？」

名簿の二人はいつもと同じ名前だった。

朔間零と八坂遊凛。

朔間先輩といえば、いつも私たちを助けてくれる良い人というイメージで、授業に出ていないのは正直意外だったのだが。

先生曰く二人は訳があって留年していて、この時期の授業は２回目だから、説得しても全然授業に参加してくれないのだと言う。

朔間先輩が有名なのは学院の様子を見れば明らかだが、遊凛先輩もあんずは入学前からよく知っていた。

毎日のようにテレビに出演していて、お母さんが大ファンだったからだ。

月９ドラマも朝ドラも、日本に知らない人はいないんじゃないだろうか。

透き通るような色素の薄い白い髪。

女の私なんかよりよっぽど綺麗な肌。

海のように光るスカイブルーの瞳。

同じアイドル科の生徒にサインを求められたときにだって、柔らかい笑顔を向けて対応していて、まるで端正に作られた人形のようだ。

何故かこの人はユニット活動を全然していなくて、先生は芸能活動が忙しくてそれどころじゃないから仕方ないと言っていた。

確かに、テレビで見ない日はない。

それにしたって、いくらアイドル科と言っても学生の本文は勉強なのだから授業に出てほしいものだ。

こんなに有名な二人がサボり魔ではほかの生徒に示しがつかないのではないだろうか。

そんなことを考えながら、いつも無意味に終わる、呼びかけをしに行くことにした。

軽音部の部室の扉からは弱い光が漏れている。

はぁとため息をつきながら扉に手を掛ける。

普段はノックをするのだが、なんだか今日は毎日の無駄な作業にイライラしてノックをしないで終わってしまった。

部室にノックが必要かどうかは人それぞれの感覚だろうが、少なくともあんずはいつもノックをして教室に入っていた。

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