炎ノ針子【弐】

火ノ華-2 ページ24

「補強はこんなモンかァ？」
「おう！紅ちゃんありがとうな！」
「若ぁ！こっちも粗方片付きましたぜぇ」
「ん。じゃあ、降りるか…」

紺炉に釘と金槌を渡し、屋台から降りる。
軽く辺りを見渡すと屋台は大体出来上がっていた。
この調子なら昼からはできそうだな。

「紅、お疲れ様」
「あ？A、か…？」
「？？Aだけど何で疑問系？」
「いや…何でもねェ」

Aの声が聞こえたから振り返れば、そこには予想以上に着飾ったAがいた。
正直、化粧なんてしてこねェと思っていたから驚いた上に、髪を全部上げ団子にしてあるから殊更驚いた。その団子もどこか珍しい。
多分、弟子がしただろうからまたやり方聞いとくかァ…。
周りが少し騒がしくなった。おいこら、勝手に見るんじゃねェよ…。

「お、Aが珍しい格好してるじゃねーか。しかも化粧までして…色気付いたか？」
「………いくら紺兄でも今のは許せないから、薙刀全力でぶつけて良い？」
「止めてくれ…炎武使う気満々だろ！洒落にならん」
「紺兄だったら大丈夫だよ！」
「紅！頼む！！止めてくれ！！」

紺炉が必死に頼んでくる。
Aは特にそういう冗談が好きじゃねェのに言うからだろ…。自業自得だとは思うが、炎武はやりすぎだと思うから一応止めた。
それより、第7の若い衆の視線の方が気になる。

「おい、A」
「何？紅」
「暫くこれでも被ってろ」
「わっ！何？法被？」
「頭に被ってろ」

Aはえー暑い〜と文句を言ってきたが、被せた法被越しに頭を撫でると何も言わなくなった。
何処からか落胆した声が上がるが、お前ェらさっさと仕事しやがれ。

「後は見回りだけだから、行くぞ」
「行くって、法被被ったままじゃ視界が悪いのですが」
「手ェ引いてやっから、着いてこい」
「たまに紅は横暴だよね…まぁ、いいけど」

Aの手を引き、屋台の見回りを始める。
ちらほらとAの浴衣を見て、声が上がる。
Aは律儀に自分の弟子の作品だから、欲しがったらオーダーしろと宣伝している。
商魂逞しい奴だなァ…。

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