貴様らとっくに両想いだからな！？[２]【天祥院英智】 (ページ2)

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－You Side－

「あっ、そ～だ。A、これ食べてみない？」

気力を無くしたような朱桜くんを苦笑いで眺めていれば、凛月くんが“何か”を差し出してきた。

『……もしかして、凛月くんの新作！』

「そーそー。ね、せっかくだから味見してみてよ♪」

私がぱあっと顔を綻ばせれば、それが好感を抱いたようで凛月くんもにっこりと笑い返す。

今回の新作も見た目はおぞましいけれど、彼のつくるお菓子のことだから……味には文句ない仕上がりなのだろう。

ちなみに自分は、“どんな見た目でも美味しいなら問題ない” 精神なので、どんなにおぞましかろうがグロテスクだろうが関係ない。……と思ってる。

凛月くんのお菓子を嫌がっている皆の姿を見るたび、口に入れれば同じなのになぁ、とか。

そんな無駄なことを考えていたら、気付けば目の前の彼は「あ～ん♪」とそのお菓子を構えて、口を開くのを待っている様子。

『え、いや普通に渡してくれれば……』

「え～、俺がせっかくサービスしてあげてるんだよ？
こういう時は有難く受け入れるべきでしょ？」

異論は認めないとでも言うように、怖い笑みを浮かべる凛月くん。
…朱桜くんも黙って見てないで助けるなり何なりして欲しいのに。

流石に英智くんの前で、こういうことは＿＿

そのとき。

.

「凛月くん」

.

彼の動きを停止させるほど凛としていて、けれど心地良い音が通る。

＿＿それは、英智くんの声だった。

「……あ～、はいはい」

すると、凛月くんは何かに勘づいたように、すんなりとその手を引っ込める。

固まっていた私の腕を優しく取ったと思えば、今度は生身のものでは無く、何個かが袋詰めされているものを手のひらに乗せてきた。

「暇な時でいいから、食べたら後で感想教えて」

『……うん』

色々急展開過ぎて、気の抜けた返事になってしまったけれど。

勘違いなのかも、しれない。
今だけは、“英智くんが護ってくれた” ということを頭の中で整理するのに、精一杯だった。

すると突然、そんな静寂を破るかのように、規則的な機械音が鳴り響く。

それが己の携帯の着信音だったことはいざ知らず、気付いたのは、朱桜くんが指摘してくれたあと。

＿＿＿＿

「……エッちゃんも、案外嫉妬深いよねぇ」

「ふふ、なんのことかな」

.