黒鳥の愛【usss】 (ページ7)

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相変わらず私には色がない。

そう思ったのは、志麻が着付けてくれたドレスを身に纏う自身の姿を鏡越しに見たから。

思わず出たため息に、志麻は首を傾げて私に質問を投げかける。

「お嬢様？もしかして気に食わなかったん？違うドレスにする？」

「いいの。志麻は相変わらずセンスがいいのね。
このドレスとっても素敵」

色こそ黒だけれど、デザインはそれぞれ違う。
私のドレスをいつも仕立ててくれるのは志麻だった。だからこうやって毎朝私にドレスを着せにきてくれる。

「嬉しい言葉やなぁ。せや、後ろ向いて？」

本当に嬉しそうに破顔した彼の言葉に素直に従う。
彼が手に持っていたのは黒い大きなリボン。
どうやらそれを腰に巻きつけるらしい。

「……お嬢様は誰にプロポーズされたん？」

シュルシュルと音を立ててリボンを巻いていた志麻は、私にそう言った。
ドキッと胸がなったのが自分でもよく分かった。

「何のことかしら？」

「あれ？聞こえてないとでも思ったん？
ほんまに昔から鈍感やねぇ」

「……盗み聞きなんて悪趣味ね」

「聞こえてきた場合は盗み聞きちゃうよ」

屁理屈ね、なんて苦笑する。
リボンを結び終えた志麻は私の手を取って、一本一本確かめるように手を絡ませた。

「俺やってプロポーズしたいんやけど」

「気が早いわね。まだその時期じゃないでしょう？」

絡ませた手を解いて、私は彼から逃げようとした。
けれどぐいっと引かれ、それが出来ない。

「ちょっと志麻！いい加減に」

「本当に愛してるんやもん」

言葉を遮られて言われた言葉は、そんな甘い甘い言葉。
いつも穏やかにその場を収める彼にしては珍しい、必死な顔で言われたものだから、どんな言葉を掛ければいいかわからなかった。