黒鳥の愛【usss】 (ページ41)

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私の目元に添えたうらたの手首をチラッと盗み見る。
陶器のように綺麗な肌には、傷一つついていなかった。

「どうかなさいましたか？」

私の些細な視線に気づいたらしい。
敏感ね、と笑って流そうとすれば、それを許さないかのように目線で訴えられる。

「うらた、朝食にしましょう」

「はい。お嬢様が白状した後でならいくらでも付き合います」

「首元、寂しくないかしら？リボンを返すわ」

「その跡はどうやって隠すおつもりですか？
ああ、俺が新しく跡を付けて差し上げましょうか」

妖しく笑ったうらたに白旗をあげる。
ここまで言われては白状するしかないわね、と降参した。

「引っ掻き傷よ」

「はい？」

「昨日、私の首を絞めた誰かには引っ掻き傷があるのよ。私が爪を立てたのは確実に人の肌よ」

「ということは腕にあるんでしょうか……。
犯人探しがしやすくなりましたね」

お互いに顔が曇ったのが分かる。
こんなことを言わなくても、犯人はかなり絞られていた。

深夜に主人の部屋に入ることが許されている人物なんて、そんなことが許されているのはこの屋敷でたった4人だけだった。今は3人しかいないけれど。

「何だか、いつかの朝を思い出すわね」

「あの本の持ち主もまだ見つかっておりませんし」

2人で苦笑してしまった。
候補者のうちの誰かが私の首を絞めた。
こんな明白なことを口にできないのは、私たちが彼らを大切に思っているから。

「朝食にしましょう。食べなければ頭も働かないわ」

「……そう、ですね」

何やら考え込んでいたうらたを見て、少し疑心を抱く。
けれどその気持ちをすぐに振り払った。
私が彼らを疑うことで、その命さえ投げうつ者がいることを私は知ってしまった。

こんな状況だからこそ、私は候補者の彼らを信じるほかなかった。