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10話 ページ19

街へ行くには馬車が必要だった。
それも私と候補者4名が乗れるほどの大きな馬車が。


「狭いねんけど」


「坂田、言葉遣い」


ぎゅうぎゅうと少し苦しそうに座る坂田とうらたと志麻。
向かい合わせの馬車の構造上、どうしたって3人が同じ側につけば狭くもなるだろう。
素直な愚痴をこぼした坂田を諫めるうらたに、私は微笑んだ。


「うらた、今日だけ彼の自由にしてあげてちょうだい。あなたにも肩の力を抜いて欲しいわ」


「お嬢様が望むのであれば、その通りに」


肩の力を抜けと言われても、きっと彼はそれに従わないのだろう。
後でとびきり甘やかしてあげなければ、と心の中で決意していれば不意に左手に感じた温もり。


「どうしたの、センラ」


馬車酔いでもしたのかしら、と顔を見てみるけれどいつもの柔和な笑顔しか浮かんでいなくて。
心配する私とは対照的に、他の3名はなぜか苛立ちを顔に滲ませていた。


「いえ、何となく」


「センラ、お嬢様に失礼やない?」


「せやで。許可もなく触るなんてあり得へんやろ」


「あら、それは貴方たちも同じではないのかしら」


センラに噛み付いた志麻と坂田にそう言ってやれば、ぐっと押し黙った。
普段から私によく触れる2人には、どうやら自覚があったらしい。
なんだか面白くて思わず笑った。


「お嬢様、街に着いたら何をしますか?」


「そうね」


不意に目についたセンラのリボン。
彼の髪につけたリボンは、今日は少し不恰好だった。


丁寧に結び直しながら、考えを巡らせる。
しばらくの沈黙の間に、志麻、坂田、うらたでさえもリボンの結び直しを要求してきたのは一体なぜなのか。


全員がリボンを満足気に見たり、触れたりしているのを見て、今日の目的が決まった。


「アクセサリーを新調しましょうか」


その言葉に4人は美しい顔をさらに美しく輝かせた。

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作者名:なつの | 作成日時:2021年6月9日 0時

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