黒鳥の愛【usss】 (ページ2)

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1話ページ2

ズキンっと強い頭痛がしたものだから、思わず顔を顰めて目を覚ましてしまった。
時計を見れば朝の4時。
いつも起きるのは6時だから、2時間早く起きたことになる。

「もう一度寝ようかしら」

うーん、としばらく悩んだものの、二度寝して朝食の時間に間に合わなかったら使用人に申し訳がない。
私は音を立てないよう慎重にベッドから降りて、身支度を始めた。

身支度といっても顔を洗って、着替えて髪をとかすくらい。
後のことは私の大事な“彼ら”がやってくれるはず。

やることが終わってしまった私は暇をすることになる。
キョロキョロと自室を見回して、見覚えのない本がテーブルの上に置いてあることに気づいた。

「これは、何かしら……？」

題名もない。著者名もない。
ただ真っ黒なその本を手に取ってしげしげと見つめた。

「なんだか不吉ね」

まるで自分のようだ。

鏡に写った私の瞳も髪も、この家に生まれた者には到底思えないほど漆黒で。
青みがかっていると言ってもいいほどの私の黒は、この家の者から忌避されるものだった。

「ふふ。もしかして、この本は私の仲間かしら？なんて」

ありえない私の考えに自分で笑ってしまう。
きっと誰かの忘れ物ね、なんて思いながら私は元の場所にその本を戻した。

さぁ、貴族の娘らしく刺繍でもしましょうか、なんて張り切っているとパラパラと不自然な音が背後で聞こえ、振り返る。

「ど、どうして？」

触れていないはずのあの黒い本が、勝手にページをめくっている。
しばらくその光景が続いたかと思えば、ピタッと止まってしまった。

怖いもの見たさとはまさにこのことで、恐る恐るその本に近づいた。
一体、中には何が書かれているのだろう。
恐ろしい写真だったらどうしよう。
何人かの使用人は起きているかもしれないから、申し訳ないけれどお茶に誘ってみようかしら。

そんな心配をよそに、ページに書かれていたのは文字だけだった。
とりあえずほっと胸を撫で下ろし、その本を手に取ってみる。

「不思議な本ね……え？」

文字をゆっくりと目で追えば、馴染みのない、けれど恐ろしい単語が並べられていた。

「悪魔……契約…。炎……？」

一体何のことだろう。
いやそれよりも、なぜこの本が私の自室にあるのか。

「ど、して、きゃっ！！」

小刻みに震える肩に乗せられた重み。
私は思わずその本を手放してしまった。