＃31 ページ32
人で溢れかえる駅前から離れ、音の少ない住宅街へと入ってゆく。
そこは、昨日行った20区の風景とは、どこか違った雰囲気がある場所だった。
全体的に、大きな建物が多いからかだろうか。
本当にここは日本なのかと、目を疑いたくなった。
「もうすぐそこだよ。気を引き締めて」
…篠原の言うとおり、本当にすぐそこだった。
「ここです〜？」
什造は、“屋敷”の塀をよじ登りながら言った。
「そう、そこそこ。…あ、それと普通に門から入るからね」
「ふぇ〜ぃ」
思いっきり、面白くなさそうな顔をする什造。
一同はそのまま、門の前へと移動した。
そこには鉄格子のようなゲートが設けられていた。しかし、鍵は掛かっていない。
「…押すよ」
篠原が、ぐっと鉄格子を押すと、さびれた金属が擦れあったような甲高い音が響いた。
黒板を爪で引っ掻いたような、なんとも不快な音だ。
Aは耳をおさえた。
そして、全員が中に入る。
ここで初めて、嘉納の屋敷の全貌が明らかになった。
「大きいですね…」
庭の両サイドには、樹が植えられ、立派な植え込みもある。
屋敷は、趣向のこられたデザインで、まるで西洋の城を彷彿とさせた。
ただ、雑草が好き放題伸びているし、清掃がされていないのか、落ち葉やゴミが顔をしかめるほどに散乱していた。
「お化け屋敷見たいですね。早く入りたいです〜！」
什造が、目をキラキラさせながらはしゃいでいる。
「確かに、そうだな」
うんうん、と頷くアキラ。
合理的に生きているように見える彼女だが、意外にオカルト系のものが好きらしい。
亜門は、肩を震わせ、ビクッとしていた。
「…さて、安全も確認出来たし入るか」
ただ一人、真面目にやっていた篠原は、スタスタと玄関へと歩いていく。
慌てて、残りの者は、彼の後を追った。
篠原が取ってに手をかけ、ドアを開くと、それはいとも簡単に開いた。
「…開いたね」
「あいたです」
あまりのあっさりように、篠原は目を丸くしている。
中に入ると、そこにはまるで生活感というものが感じられない空間が広がっていた。
壁や天井には、白い糸のような蜘蛛の巣が何重にも重なって見えている。
床に敷かれた、高級品であろう赤いカーペットはホコリで黒ずんでみえた。
「出そうだな」
ボソリとアキラが言うと、石のように固まっていた亜門がすぐ反応した。
「…何がだ」
予想していた答えにアキラはクックックと笑う。
「“喰種”が、だ」
什造は、中央の巨大な階段で一人グリコをやっていた。
Aは言う。
「…皆さん、早く行きません？」
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アリス - シロナとクロナって書いてありますけど、ナシロとクロナじゃないですか？?(・_・;? (2018年11月9日 16時) (
レス) id: 9ad0b945de (このIDを非表示/違反報告)
YUUto1005 - 篠原さんの財布がー (2018年8月14日 9時) (携帯から) (レス) id: 9e44ee148d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アイスゥ | 作成日時：2018年3月27日 12時
