水獄鉢はキスする場所 ページ10
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こんなことになるなんて。
玉壺の血鬼術によって、無一郎と、継子の私は出口のないこの狭い水中に閉じ込められてしまっている。
持てる全ての空気を使って突き技を繰り出していた無一郎がこの鉢を壊せなかったのなら、私に出来るわけがない。
徐に、無一郎が私の手を取って、ぎゅっと握りしめた。
冷たい水の中にいるのに、その手にしっかりとぬくもりを感じて、泣き出してしまいそうだ。
目の前の無一郎だって毒も回ってきて、いつもの涼しい表情なんかじゃなくって、苦しげに歪んでいる。
限界に近いのがわかる。
その瞳と視線がぶつかり、最期を覚悟しているのが伝わった。
せめて、脱出さえ出来れば…
突き技以外のをもう一発、無一郎が出せれば…
諦めたくなんか、ない!!!
もう、これしかない。
無一郎、闘って。
みんなを救えるのは、霞柱のあなたしか居ないの。
じっと見つめてくる無一郎の頬を両手で引き寄せ、唇を探し、私の唇で覆う。
大きな瞳がさらに大きく見開いて、きらりと光る。
私は肺に残っている空気を全部吹き込んだ。
刹那。
無一郎の渾身の刃で斬撃が繰り出され…
「『がはッ!!!』」
私たちは、ばしゃりと同時に地面に叩きつけられた。
『…は…、良かった、無一郎……』
「……はー…ねぇ、随分と積極的になったね。」
『…っ!今のは…っ!仕方なくで…行為的には無かったことに……!』
「…さっさと奴を斬ろう。あとで僕からも、するね。」
『何を!?』
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あぁ〜いけませんお客様〜!
だからって自ら水獄鉢に入ろうとしてはいけません〜!
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作者名:まちゃむん | 作成日時:2023年11月21日 19時