-2 ページ16
*
『室橋さん……夢って何でしたっけ……』
「さあ……私にもわからないですね……」
『そんなこと言わないでください!! 諦めないでくださいよ!!』
うわああんと最早電話越しに泣き始める秋山先生。電話の向こうで、『ちさと先生!?』とアシスタントさんの驚く声がする。
夢ってなんなんだろう。秋山先生の泣き声を聞きながら手元の辞書に手を伸ばした。先生は疲れているようで、アシスタントさん相手に『私は夢なんてっ……!!』大丈夫ですか本当に。
今日この後、時間でも出来たら仕事場に寄ってあげようかと思った。毎回毎回編集部に来ていただく訳にもいかないものね。
【夢現】、【夢語り】と下段の見出し語に気を取られながら【夢】を見る。夢……。
『室橋さん!! 私は思うんですよ、少女達に夢と恋の花を咲かせる月刊少女ロマンスでわざわざ夢特集なんてうぐっ』
『ちさと先生ーっ!!?』
秋山ちさとの仕事場、阿鼻叫喚の図がありありと目に浮かんで、「後ほどお伺いします」と私は投げやりに電話を切った。
さてどうしたもんかな、と机を見渡し、小田先生への連絡があることに気がついて電話をまた取ろうとした時、不意に携帯電話が鳴った。
こんな時に誰だろう、と液晶画面を見て思わず目を丸くする。
"宮前 剣"
驚きと恐怖と困惑に固まるのを感じながら、私は電話から手を話して携帯を耳に当てた。
「……もしもし?」
『室橋か』
「え、ちょっと宮前くん、連絡あるなら先に言ってよね……本気でビビったよ……」
『は?』
怪訝そうな宮前くんの声がする。宮前くんがこの私にわざわざ電話するとか、一瞬詐欺かと思ったわよ。
私がぶるぶる震えていると、『……よくわかりませんけど』宮前くんは構わず話を進めるらしい。うん本物の彼だ。
『今日これから、何か用事とか』
「ん? 特にはないけど」
『じゃあ一つお願いしていいですか』
「みっ宮前くんが私にお願い!!?」
ガタッと立ち上がると隣の席の先輩が「どうしたの!?」と驚く。あと他にも視線を感じた。
だって事件だよ事件。宮前くんがわざわざ電話で私にお願い……え? もう春だけど雪とか降ってないよね?
はー、と深いため息が電話越しに聞こえた。それから宮前くんは、単刀直入に私に"お願い"をしてきた。
『夢野先生の所、行ってもらってもいいですか?』
*
33人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 怒らないで委員会会長mAKAさん» 私なんぞが剣さんなんて恐れ多いです……!位置的にはパラスコ星人くらいで充分ですよ。……前野さんに投げたら逆に喜ばれちゃうので、ダメージは与えられそうにないですね……。 (2016年3月18日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - スマトラ島のラフレシアさん» レスありがとうございます!!いや、なんというか作者様って野崎くんにとっての宮前さんみたいな感じなんだなーとしみじみ思ってます。あ、タヌキ拾ってくれてありがとうございました。前野にでも投げときましょう。← (2016年3月18日 18時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - お久しぶりですー!!と、とりあえずタヌキは私がキャッチしておきました(使命感)。小田先生、気付いて頂けたようで嬉しいです!よかった!マイペースですが、よいものをお届けできるよう精進して参ります!! (2016年3月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
怒らないで委員会会長mAKA(プロフ) - 新作…!!あ、もう目からタヌキが。内容も流石です!!前作のキャラ(小田先生)もからめてきてて最高です!!ゆっくり頑張ってください!! (2016年3月11日 1時) (レス) id: bd598a3311 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 浪越りいさん» 大変お待たせ致しました……!!すみません。ありがとうございます。私も大好きです。あんまり縛らずに自由且つのんびり進めますので、よろしくお願いしますー! (2016年1月24日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年1月23日 18時