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その日の夕食はいつも以上に賑やかだった。
明日の朝帰ると言ったAに食事中もあちこちから声がかかる。
元の場所へ帰るだけであって今生の別れでもないのだが、帰りを惜しむ声もちらほら聞こえた。
Aとしては特に何もしていない、ただ保護されていただけの数日間だったが、幹部と話す機会が多かった割りにはそれなりに居心地も良かった気がする。
豪華な装飾の扉の前。
夜の闇を照らす灯りによって昼間より厳かな空気が漂っている。
何度か来たことはあるが一人で来るのは初めてだ。
他国の者にここまでの道筋を覚えられるのはどうかと思うが、それも信頼の証だろうと無理矢理納得してAはドアをノックした。
「どうぞ」
聞き慣れてしまった低音に促されて扉を開ければ、部屋の主が椅子から立ち上がった様子が視界に入る。
昼も座ったソファーを勧められてひとまず腰を下ろすが、長くなるのだろうか。
『ご用件は何でしょう、グルッペン様』
浅く腰掛けたまま男の顔を見上げて問いかける。
夕食後の少し空いた時間に呼ばれたが、こんな時間に何の用だろう。
明日についての話なら既に終わらせている為、特に話すこともないはずだ。
しかし彼は肩を軽くすくめて笑みを浮かべる。
「酒は飲めるか？」
『然程強くはありませんが、多少なら』
「充分だ。一杯付き合ってくれ」
どこからか取り出して来たワインのボトルと二つのグラス。
彼はソファーの前のローテーブルに置くと慣れた手つきで栓を開けてグラスに注いでいく。
軽くグラスを鳴らしてから相手に合わせて一口頂けば、目の前のグルッペンは少し意外そうな顔をしていた。
「君にしては警戒心が足りないのではないか？」
『ではこの一口で退室してもよろしいので？』
「冗談だ。まあ何も仕込んではいないがな」
『でしょうね。で、お呼び頂いた本当の理由は何でしょう？』
そう聞くとグルッペンは脚を組んで少し楽しそうにグラスを回す。
中の赤い液体が揺れるのを眺めている様子は似合っていて様になっているが、その口からはいつかも聞いたような言葉が飛び出した。
「君と話したかった、という理由では駄目か？」
駄目だろうに。
すぐには言わなかったAだがその感想は伝わったようだ。
相手は少しだけムッとした表情に変わる。
「せっかく滞在していたのに君と話す時間があまりなかった。…他の奴らばかり絡みに行っていたしな」
以前とは少し違う言葉。
少なくとも仕掛けられている感じはしなかった。
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はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
