【wrwrd!】とある社畜外交官の憂鬱

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それはささやかな復讐だった。
総統から他国の外交官への文書、それも公式文書と共に送られてきた直筆のものとなればそれなりに影響力のあるものになる訳で。
だからこそ圧力だったのだが、Aはそれを逆手に取った。
前回の様子から勝手に仕込んだんだろうと予想してトントンへ言いつけるという行為を行ったのである。
案の定トントンは眉間に皺を寄せている。

「…グルさん、あんた自分の立場わかっとるよなぁ？何勝手に送って迷惑かけてんねん」
「…俺が書いたという証拠はないぞ」
「どう見てもあんたの字やろ。俺がわからんとでも？」
「いや、トン氏落ち着け。これは彼女とのゲームのようなものであってだな、別に深い意味は…」

段々と顔が強張っていくグルッペンとは対照的にオスマンはまだ苦しそうに笑いをこらえている。
さて、やりたいことはやれたしここらでそろそろ助けよう。
さすがに機嫌を直してもらわないと後に響きそうだ。

『書記長殿、口を挟むようで申し訳ありませんが、私は総統閣下からお言葉を頂けるとは夢にも思っていなかったので本当に嬉しかったのです。それなのにこちらの都合で伺うのが本日になってしまったので、お詫びに総統閣下には外交のものとは別に土産をお持ちさせて頂きました』
「A外交官殿…申し訳ありません、気を遣わせてしまって…」
『いえ、とんでもございません。むしろどれがお好みに合うか想像しながら楽しく選ばせて頂きました』

そう笑ってグルッペンへ向き直るとジト目で返される。
意外と子供っぽいな、こんな顔もするのか。
自分で仕掛けておいてなんだが前回より親近感がわいた。

『総統閣下、お渡しするのが遅くなって申し訳ございません。ですがきっとご満足頂けると思いますので、よろしければご休憩の際にでもお召し上がり下さい』
「………」
『どうなさいました？…“ゲーム”なのでしょう？』

少し目を細めて言った彼女にとうとうオスマンがこらえきれなくなった。
グルッペンも一瞬目を見開いた後、オスマンに釣られるようにしてクツクツと笑い出す。

「またもやられたか。悔しいが君の方が一枚上手のようだ」
『何のことでしょう？』
「ひぃ、ちょ、あかん、お腹痛い…！」
「オスマン？えぇ？グルさんまで何笑ってん…」
『書記長殿、恐らく私のせいかと。申し訳ありません』
「え！？いえA外交官殿のせいでは…！」

グルッペンよりもトントンに深く礼をした彼女を見てオスマンの笑いは更に深くなった。

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