. ページ42
.
ガツン、と頭を鈍器のようなもので殴られたような感覚。
(そんな……何で)
「Aちゃんが作曲？プロデューサー？そんな地味な事よりも、あなたは”こっちの世界”の方が似合ってる」
半笑いで、母は私に向かってそう言った。
ムカつく。ムカつくムカつくムカつくっ！！！
「何も知らないのにそんな事言わないでっ！！私はもう、”あっち”には戻らないって決めてるっ！！」
「お黙りっ！！誰に向かってそんな口聞いてるの！？」
妙に上から目線で、母は私を罵倒してきた。
「作曲なんて目立たない」「プロデューサーなんてただの雑用じゃない」「才能の”さ”の字もないくせに」
母の口から出てくる言葉全てが、私の心を深く抉る。
……ぐりぐりと、鋭いナイフで心臓を丸ごとくり抜かれているようだ。
「いい？誰がここまであなたを育てたと思ってるの？私よ、この私。あなたがどの世界でどの様に生きればいいかなんて、母親である私が1番分かっているんですから」
そう言いながら、母は私にあるものを差し出す。
それを見た瞬間、絶望感が襲ってきた。
「【解約書】……何で、こんな」
「お待ちくださいお母様。流石にこのような真似をされては、副所長の自分が」
「言ったでしょう？社長には直接話をつけた、と。あなた達には、何の権限もないわよ。お部屋を用意してくださる？そこで、これを書いてちょうだい」
七種くんの話もろくに聞かず、ぽんぽんと事を進めていく母。
パッと解約書から目を離せば、今にも母を殴りにかかりそうな漣くんの姿があった。
「……漣くん、やめて。大丈夫よ」
「何が大丈夫なんッスか。Aさんが辞めさせられそうになってんですよ？」
「母に逆らわない方がいい。お願い。あの人、本当に何やってくるか分からないから」
(そうだ……この人は、実の娘である私にも手を出すような人だから)
高価な赤いヒールをカツカツと鳴らし、七種くんに案内されるがまま着いていく母。
そんな彼女を見ながら、震える手で右腹部を触る。
『あなたが悪い……何度言われても出来なかったあなたが悪いのよっ！！』
あぁ……嫌だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 707人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - 最高に面白いです！日和が可愛すぎる！！！更新楽しみに待っています(^^) (2020年1月24日 17時) (
レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 凄く私好きな話だと思います！滅茶苦茶好きになりました！！更新待ってます。頑張ってください！！ (2020年1月23日 6時) (レス) id: 1d868b34d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水神友花 | 作成日時：2020年1月19日 12時
