目と目があえば恋に落ちる【あんスタ】

2.後輩くんは不審者 ページ2

タライの如く彼の脇腹に担がれ、せっせと運び込まれたのは我が玲明学園だった。…え、なに、学校特定されてるの？？

嫌だ嫌だと藻掻いてみるも、DKの力に勝てる訳もなく。
近くにいた生徒に助けを求めても、チラリと見られて無視を決め込まれる。
なんなんだこの学校……たった一人の女子生徒だぞ助けろよ……プロデューサーだぞ丁重に扱ってくれよ………


「……あのさ、君はどこに向かってるの？」
「寮」
「寮って…………まって、もしかして君ここの生徒なの？」

流石の彼も驚いたらしく、ハ？と拍子抜けな顔をされてしまう。すまん。でも私君のこと見たことない。というかクラスメートの顔すら曖昧なんだわ。


「…忘れてんのかよ」
「なんて？」
「なんもない………ホラ、着きましたよぉ」


彼の足がぴたりと止まったかと思えば、これまでのタライ担ぎとは裏腹に存外優しく床に降ろされた。

目の前にはそれはまぁ綺麗なドアがあって………
す、凄…これが玲明の寮…？

何ぶん家を出てからはアパート節約暮らしなもので、玲明生三年目にしてお初の寮施設である。え、こんなピカピカなの？普通に羨ましい…


「お邪魔しま〜…って玄関まで綺麗！！」


鍵を開けてもらいズカズカとお家に上がる。

綺麗だな…まぁ漣くん片付け上手そうだしね。
私たまに掃除する程度だから尊敬するなぁ。

一人ぶつぶつと話していたものの一向に返事が返ってこなくて、嫌な予感にゆっくり振り向けば、そこには大層悪いお顔をした漣くんがいるわけで。



＿ガチャリ


彼が器用にも後ろ向きで鍵をかけたのが見えた。


「ねぇ先輩、無闇矢鱈と男の部屋入っちゃだめって、習わなかったんすかぁ…？」
「い、やぁ………習わなかったですかねアハハ」

ずいずいと壁に追いやられ、気付けば多くの女の子の憧れの壁ドン状態になっている。
惚けた顔でこちらを見る彼の顔はとっても眼福なんです。なんですけどもね、如何せん私は少数派に属する女みたいなんですよ。


「……ね、先輩、キスしていい？」
「いや駄目に決まってるよね！！…ってわかってたけど全然話聞いてねぇし！！！」

そうしている間にも、彼の顔はどんどんとこちらに近付いてくる。……エ、ちょっと本気？まって！？まってくれ頼むから


「…ッ本当にまって、ジュンく」


ガチャリ、鍵が開く音が聞こえた。

漣くんが壁となっていて全く持って見えないけど…
救世主だ、救世主が来てくれたんだ！



「ありがとう貴方のおかげで命が助かっ…」
「あ、おひいさ…」

「〜〜〜ッ、不埒だね！」


…なんか、見覚えがありすぎるんだよなあ。

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