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『あ!名前、なんていうの?』
「…涼太だよ」
『涼太くん!私はA!よろしく!』
「もう会うことないんじゃない?」
『えー…明日はこの公園来ないの?』
俺の家から少し遠いここにわざわざ来る必要なんてなかったけど。
でもその時の俺は、もう少しこの子と話したいって思って。
「明日も来るよ」
『やった!約束!』
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その日からその公園に通うようになって、Aちゃんと遊ぶようになって。
1週間くらい経った。
「夏休み終わったら、俺こっちに来れなくなる」
『家遠いんだもんね』
「うん」
夏休みが終わったら、もうこの子と会うことはなくなる。
『涼太くん、これあげる』
「これ何?」
『指輪!』
オモチャの、作り物の指輪。
『じゃあね!』
その指輪を渡してAちゃんは、走り出した。
公園を出て、すぐの道路。
トラックが来てることに本人は気づいてなくて。
「Aちゃん!!!!」
俺の声なんて届いてなかった。
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周りを歩いてた大人の人が、救急車を呼んでくれて。
「…ごめんね。Aと遊んでくれてありがとう」
Aちゃんの母親らしき人は、そんなことを言った。
その人はすごく優しくて、俺を病院まで連れていってくれた。
「…A、記憶を無くしちゃったみたいなの。きっとあなたの事を覚えていない。それでも面会、する?」
悲しみが伝わってくるAちゃんの母親の声に、俺は首を横に振って家に帰った。
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作者名:愛璃珠 | 作成日時:2021年8月7日 20時