あいつはあの子のもの－風磨－ (ページ28)

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【部屋】

あれから結局一緒に帰るハメに

なってしまい、

家の前までくっついてきた中島は、

"じゃあ、また明日"

そう言って、さわやかな笑顔で

手を振って帰っていった。

こんな付き合い方間違ってるって

ことくらい、馬鹿な私でもわかってる。

でも、怖いんだ。

(人1)に嫌われることが。

ずっと仲良くなりたかった(人1)と

やっと仲良くなれたのに、

風磨のことが好きだ

なんて言ってしまったら、

何もかもが終わってしまう。

『……』

風磨の声が聞きたかった。

こんな最低な私を、受け入れて欲しかった。

ただそれだけの感情で

私は風磨に電話をかけようとした。

だが、そんな時だった。

携帯の着信音が部屋中に響きわたり、

ヴーヴーと携帯が振動する。

光る画面に映し出されたのは、

『…っ!!』

"(人1)"の文字

震える指先で画面に触れ、

携帯を耳に当てた。

『…もしもし』

(人1)｢Aちゃん、どうしよう。笑｣

笑いながら言っているが、

明らかに様子がおかしい。

『……泣いてるの？』

(人1)｢……ｸﾞｽｯ｣

そう聞くと、(人1)は

更に泣き出した。

(人1)｢…風磨と、喧嘩しちゃった……｣

『…どうして？』

(人1)｢…一緒に、帰ってる、時に、

風磨の、様子が、変、だったの…

だから、私、他の女の子、のこと、

考えてる、んじゃ、ないかって、

嫉妬、しちゃって、｣

『……』

(人1)｢……もう、ダメ、かもしれない…｣

途切れ途切れに聞こえる(人1)の声と、

たまに聞こえる鼻を啜る音、(人1)の嗚咽、

(人1)の存在全てが

私を余計に苦しませた。

心の中のどす黒い感情が

込み上げてくる。

――――"早く別れちゃえばいいのに"

『大丈夫だよ。

付き合って、もうすぐ一年でしょ？

そんだけ一緒にいる二人なら、

きっと何があっても大丈夫だから。

落ち着いてから、ちゃんと話し合えば

きっと、わかってくれるよ』

(人1)｢…ありがとう、Aちゃん……｣

『……あたし、何やってんだろ…』

(人1)との電話が終わったあと

気を抜いた瞬間に溢れだした涙が

頬を伝って床へと落ちていった。