42通目 それだけが俺の望みだ。 ページ42
(……へ?)
素っ頓狂な声を漏らし少女は恐る恐る目を開いた。そしてバッと頭を上げ何か言いたげにパクパクと口を開くが言葉が出ないようだった。
(よくここまで頑張りましたね。辛かったでしょう)
信二は手を下ろすとうっすらと笑みを浮かべた気がした。
(信二……)
(……あんたに名前で呼ばれると変な感じしますね。郵便屋で構いませんよ)
(いや、名前が分かったんだ。俺は名前で呼びたい)
信二は不満そうな顔をしたがそれを了承ととらえる。もう忘れてはいけないからな。いつでも呼べるように。
(あの……)
少女が動揺を隠せないまま口を開いた。目は右へ左へと自信がないことが分かる。
(怒らないんですか?)
一言そう言うとスカートをギュット掴み緊張に耐える。信二は全く表情を見せずに少女に言った。
(反省してるようですし、勝手にしたことだから叱る権利なんて俺にはありませんし、怒ってなんかいません)
少女はその場に泣き崩れた。ありがとう、ごめんなさいと何度も信二に伝えた。
(よかったな。ずっと心配していたもんな)
少女は俺に笑顔を返した。正に輝くような笑顔だった。そして全身が砂のように足がさらさらと消えていく。
消滅……と信二は呟いた。
(消滅?!成仏ではないのか?!)
カラ松は信二に嘘だと言ってほしかった。だがそこにあったのは肯定を表す無言だった。
(彼女は自死しました。天国にも、もしかしたら地獄にも行くことは許されません。こればかりはどうも……)
(そんな……せっかく)
(いいんです)
少女は笑顔を崩さずに明るい声で言った。
目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
(それに相当することを私はしました。当然の事です)
腰から下が全て消えた。首にかけられているロープもよく見たら上から徐々に消えていた。
(カラ松さんが居なかったら謝れなかった。本当にありがとうございました)
首から下が消えた。
(本当にごめんなさい……。もし生まれ変われたら絶対に会いに行きます!だからそれまで)
(ああ、絶対に逢おう!)
涙を堪えるが声が変に裏がえる。さらさらと砂が消える。人の命はこんな風に消えるのかと悲しくなった。
(ありがとう……)
少女の体は小さな砂になって風に吹かれて消えた。いつの間にか部屋は元の部屋に戻っていた。割れた窓ガラスから吹く夏の風が部屋を満たした。
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囚人2 - くにひなさん» 別アカから返信させていただきます囚人です。感想ありがとうございました!できるだけ良いものを届けられたようなので満足です!お粗末なものでしたがここまで読んでいただきありがとうございました! (2017年3月31日 18時) (レス) id: e6ab6539df (このIDを非表示/違反報告)
くにひな(プロフ) - 囚人さん、お疲れ様でした!!最後までとても感動しながら読ませていただきました。°(´ω`)° 。ひゃー、本当に面白かった!!カラ松、無事現世へ還れて良かったです。 (2017年3月27日 14時) (レス) id: 9876eec4f2 (このIDを非表示/違反報告)
囚人(プロフ) - ガーナさん» ガーナさん!応援ありがとうございました!こんなもので少しでもいい方向へ向かえたならこれほど嬉しいことはないです。ガーナさんのコメントのお陰でここまで来れました。嬉しいコメント、本当にありがとうございました! (2017年3月12日 20時) (レス) id: 1320336adf (このIDを非表示/違反報告)
ガーナ - 完結、おめでとうございます!。この小説が無事完結を迎えた嬉しさと寂しさで胸がいっぱいです。私はこの小説を読んで、いい方向に人生が変わった気がします。それに、囚人さんの世界観が大好きです!。本当に、おめでとうございました!。これからも頑張って下さい!。 (2017年3月12日 20時) (レス) id: cf0ca5759a (このIDを非表示/違反報告)
囚人(プロフ) - 朱雀悲奈さん» おそらく、私でしたら、活動する際は、挨拶は、どうも、誰々ですみたいなかんじなのでそれはももしかしたら、私かもしれません笑 いつか見つけたら是非お声をお待ちしてます! (2017年3月10日 0時) (レス) id: 1320336adf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:囚人 | 作成日時:2016年4月26日 20時