【おそ松さん】拝啓、愛するファミリーへ【カラ松】

37通目　皆と一緒に居たかったって ページ37

朝5時、夏らしく日はとっくに昇っていたようで真っ青な空が広がっている。自分が死んだ日もこんな天気のいい日だったなと他人事のように苦笑する。
　もう日も無いのだろう。家族への手紙も書いた。もう未練は達成されているのだ。
　となるとあの夢のことが気になってしかたなかった。やはり郵便屋と話したほうがいいのだろうが正直に言うと怖かった。これを言ったら吉とでるか凶とでるか予想がつかずにどうすると悩む。
　思わず目をそらすように天井を見上げる。見慣れた木造の天井が少し霞んで見えた。

(何を迷ってるんです？)
　
　突然外を眺めていた郵便屋が話しかけてきた。透ける体から見る青はくすんでいる。
　人の顔を見ずに話をするなんて珍しかった。話す時は大抵相手の目を見据えるようにしていたが、外を眺めたままだ。
　何も応えない俺に構わず気怠げ声で話が続く。

(まあ、何を悩んでもいいですけど、あんたはもう成仏できるんですから。身を任せておいた方がいいかとは思いますが、悩むことが出来る今の内に、好きなだけ足掻いてください)
　
(……そうか)
　
　二つ返事で返す。彼の言葉には見透かされているかのような鋭さがあった。
　俺は郵便屋にも成仏してほしい
　その思いは本当だ。このままだとどうにもならない……なら……。

(郵便屋、少し話を聞いてくれないか)
　
　答えはなかったがそれをイエスと読みとり続ける。

(最近、夢を見るんだ。誰かの人生を側で見ている夢。とても楽しそうな夢でな、いい仲間に囲まれて、いい職場で働いて。見ている俺も楽しかった。だが、その人は事故で死んでしまうんだ。少女を庇ってな、信号無視のトラックに轢かれた)

(へえ、それはまた気の毒に)

　そっけない返事が酷く空しく思えた。

(あぁ、それで……)

　その先は話すことに躊躇した。緊張感に襲われるがふぅと息を吐き続けた。

(それで、トラックの運転手に連れ込まれて、山奥でその人は埋められて……男はそのまま逃げた。それで、その人の名前は……)


　周りが五月蝿い。かたかたと震えるような音が響く。まるで自分の心を表すようだ。

(名前は……)

　口を開く

(赤坂 信二)

　
　
　刹那耳を裂く音が部屋に響いた。それは銃声にも聞こえ思わず目を思い切り閉じる。風が部屋のカーテンを揺らした。パリパリという音に誘われ目を開くとそこには



　粉々に割れた窓ガラスと
　





　

　“黒く染まった(赤坂信二)が居た”

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