2人の短いお話 その6

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あの向こうに置かれてある棚。

ミツの私物等が置かれてある棚には、100均で購入した俺の緑色のチェック柄のマグカップも並んでいる。

２つのマグカップにコーヒーが注ぎ込まれると、一気に良い香りが部屋に広がった。

ミツがコーヒーを注いでいる間に、俺は蜂蜜とミルクを取りに行く。
甘いものが苦手なミツは砂糖などを全く使わないから、これも俺がスーパーで購入して、保健室に常備させている。





「はい、どーぞ」
「ありがとう！」








ミツから緑色のマグカップを受けとり、スプーンにたっぷり蜂蜜をすくってコーヒーに入れる。黄金色の蜂蜜がとろり、とコーヒーに溶けていく。





「毎回思うけど、よくそんなに甘いの飲めるよな」
「ミツが蜂蜜入れると美味しい、って教えてくれたんじゃん」







俺がたっぷりと蜂蜜が入ったコーヒーをかき混ぜていると、ブラックのまま飲むミツは眉を細めて、こちらを怪訝な顔で見ていた。





「いや、そうだけど…」
「で？彼女は？どんな人なの？」






コーヒーを一口、口にするとまだ少し苦味が残っていたが、蜂蜜はこれくらいにして、ミルクを入れた。





「ミツの彼女って俺のイメージだと、運動部の可愛いマネージャーみたいな感じだな。すごい献身的な彼女ってイメージかも」
「運動部のマネージャーねえ…」






ぼんやり、と彼女を思い浮かべているのだろうか。
でもすぐに勢いよく首を横に振った。

どうやら違うみたいだ。






「マネージャーではない。絶対に違う。
女子力は確かに高いけど、そんな器用なこと出来ない。不器用だし」
「ええ〜？最初から全然想像と違う。難しい。
んんん、じゃあミツがリードしてあげてるの？」
「俺が決めたことが、あっちの気に召さなかったら即不採用。あっちのやりたいこと優先」
「めっちゃ尻に敷かれてんじゃん」
「尻に敷かれてる、ってのもまた違う感じなんだよなあ。なんか、振り回されてる、って言う方が合ってるかも」
「それ自分で言っちゃうんだ。ミツすげー」







けらけら、と俺は笑ったけれど、ミツはなにか言葉を探しているようで、大きな瞳は宙を見上げていた。






「お前みたいに、何でも言ってくれたら楽なんだけど」
「話聞く限りだとワガママな気難しいお姫様って感じだね」
「はは。お姫様、か。まあそれも合ってるかもな。気難しいお姫様」






保健室の外に何となく目をやると、梅雨がようやくこの前終わり、空は明るく青空が広がっていた。

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