2人の短いお話 その6

ミツ先生の恋人 ページ43

長編作品の冒頭部分のリメイク



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「えっ、ミツ、彼女いたの」
「あだ名で呼ぶな。北山先生って呼べ。何回も言ってんだろ」





ミツは、俺らが通う男子校に去年赴任してきた保健室の先生だ。喧嘩っ早い不良の俺は、いつも生傷が絶えなくて、保健室に入り浸っている。






「ええー？！彼女いるなんて一言も言ってねえじゃん！いつの間に？！」
「タメ口も止めろ。敬語使え」






前までいたおばちゃん先生も、母ちゃんみたいで面白かったけれど、ミツはお兄ちゃんみたいに親しみやすくて、これで三十路だって言うのが信じられないくらいだ。

そんなミツは他の生徒にも勿論人気者で、休み時間や放課後にはいつも来客がある。

流石に授業時間に訪れるような不良は俺しかいないようで、ミツとのお喋りを誰にも邪魔されずに楽しめる取って置きの時間だ。







「どんな人？美人？」
「うっせえ！いいからもう喧嘩すんな。ほら、手当て終わり！さっさと帰れ」
「やだ！教えてくれるまで帰らない」
「……こうなるから言いたくなかったんだよな」







ガシガシっと無造作に髪をかきあげるミツは、大きなため息をついた。





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で、ミツに彼女がいる、と知ったのはつい5分前の事だ。


"明日は有給を取るから、俺がいないから明日だけは喧嘩をするな"と言われた。

何でこんなド平日に有給をとる必要があるのか問い詰めたら、年下の恋人の誕生日なのだと自白したのだ。





「俺、ミツのことそんなマメな男だと思ってなかった。
彼女がいたとしても、普通に記念日忘れちゃったり、誕生日プレゼント的はずれなものあげて、喧嘩しちゃうくらいのガサツな男だと思ってた」
「二階堂。いいか？二度と保健室に来るんじゃねえ」
「あーごめんごめん。
でもまじで、彼女の誕生日に公務員で有給わざわざとるような彼氏だなんて。相当尽くしてるね？」








ミツは、再び深いため息をつきながら椅子から立ち上がって、パーティションの向こうに消えた。

マグカップを２つ手に持ったミツが戻ってきたので、机の上の筆記用具やノートを脇に寄せた。

これも俺だけの特別対応だと思う。

俺がいつだか、お茶とか出ないの？と冗談で言った。そしたら次に訪れたときに本当にコーヒーが出てきたものだから、嬉しくなって、その日の帰りに100均に行ってマグカップを購入した。

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