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目的の講義室がある棟へと着くやいなや、どんっ、っと体に軽い衝撃を感じた。
「った……。え、なに……」
「うわ、ごめん!大丈夫だった?」
俺の言葉とほぼ同時に謝罪の声が聞こえる。
どうやら俺は、左手に見える曲がり角から飛び出してきたこの男とぶつかったようだ。
「大丈夫だけど……、そっちこそ大丈夫?」
「うん!見ての通りなんとも!」
「いや、君の方じゃなくて……」
俺は分かりやすく床に視線をやる。
そこには大量の紙がばら撒かれていた。
「え、あ、うわ……やっちったぁもう〜……」
そのことに気づいた男は苦い顔をしながら、俺とぶつかった際に落としたのであろう大量の紙を拾い集め始めた。
見たところ同い年といったところだろうか。
なんなら1個下にも見えなくはないけど、この棟はこの学校に通っている生徒じゃなきゃ入れないし、年下の線はないと見ていいはず。
必死に拾い集めているのを見て、さすがの俺も無視して歩いていくことは出来ない。
「それじゃ」と言ってこの場を去りたい気持ちを抑えて、俺も無言で紙を拾い始める。
「うわ、ありがとう!ごめんね、ほんとに」
「いや、別に……」
我ながら愛想の欠片もねぇなと思いながらそう短く返す。
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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時