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ーー「商店街にやってきましたー」
そう言うと後ろからアイドリッシュセブンの皆からイエーイ、という歓声が上がる。今はレギュラー番組とまでは行かないが、お昼の穴埋めロケ番組の収録中だ。穴埋めといえどアイドルとしてお仕事をもらえるのは嬉しい。
しかしこの炎天下の中のロケは辛い。蒸し暑さが体にまとわりつくような、気持ちの悪い日だった。皆、暑さに少しだけ疲れ気味のようだ。手をパタパタとうちわのようにしてみたり、スタッフさんから貰った水を飲んでいたり、各々暑さを和らげようとしている。
まぁ、弱音は言っていられないので昭和の雰囲気の商店街を歩く。お店の人から声をかけられたり、気になるものがあった所に適当に入っていった。お店の中はクーラーが入っていて涼しかったのでなかなか外に出られない。お店の中と外との落差が激しかった。
そうやって歩いていると、一つの八百屋さんを見つける。なぜかお店の前にはキャンプ用より小さな椅子と、大きなスケッチブックがあった。スケッチブックにはその八百屋さんの絵が描かれている。水彩画の優しいタッチだ。古びたところなど細部まで描かれていて素人目にはとても上手に見える。
「お上手ですね、ご主人が?」
欠かさず陸が楽しそうに駆け寄っていく。お店のご主人に問うた。
「あぁ、絵の専門学校通ってる女の子だよ」
へえ、とリアクションを取る。皆、きれいな絵に興味津々だった。今はお手洗いに行っているらしいが、こんな綺麗な絵を描く人はどんな人なのだろうか。きっと心が優しい人なんだろう。
話もほどほどにそこを去ったが、少し引っかかる。……いや、違うだろうな。でも、また会えたなら。
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なつめみく - 三月結婚しよう。 (9月28日 17時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2018年11月30日 18時