一話目 「開店」 ページ1
天気は晴れ。少し肌寒いが、昨日よりは断然暖かくお出かけ日和だ。
そんな日に緑色のロリータ服をまとった少女はせっせと店の掃除をしていた。床に落ちた土を掃き、水がこぼれてしまった机を拭く。時より植木をどかしたりなど重労働をするため、寒いこの季節でも額にはうっすらと汗が浮き出ていた。
「……こんなものでしょうか」
一通りし終えた少女は、綺麗なタオルを取り出し汗を拭きとり、ふぅと一息つく。しかし、少し休めば再び動き出す。
なぜなら少女は――リリー・オブ・ザ・ヴァリーはここの店の経営者だからだ。すでに開店30分を切っており、速く準備をしなければいけない。
「花たちの状態は好調ですね。いいことです」
一人でつぶやき、満足そうにうんうんとうなずく。
この店はドール・フィオーレといい、植物を売っている。店自体は小さいが、リリーが使う魔法――植物の成長を操る魔法により春夏秋冬様々な植物がそろっている。その分手入れも大変なのだが。温度を一度でも間違えれば、敏感な植物はあっという間にしおしおに枯れてしまう。
リリーはそんな手のかかる植物たちが毎朝、毎朝元気に咲いているのを確認できるとうれしいのだ。
「――そろそろ開店時間ですね」
一度店の外へ出たリリーは、 入口の扉にかかった『close』と書かれた木の板をひっくり返し、『open』を表に向ける。
ついでに、外の植木の状態を確認する。顔を近づければ、花のほんのり甘い香りが鼻をくすぐる。しっかりと頭を支える茎、みずみずしい葉、綺麗な色をした花びら、どれも健康のあかしだ。
異常がないとわかったリリーは再び店に戻る。これで後は客を待つのみだ。
「今日は天気もいいですし、たくさんの方が来てくれればいいですね」
掃除をし始めたころは、まだ空は暗く寒さが肌に突き刺さった。しかし現在は空には澄んだ青空が広がり、暖かな日光が降り注いでいる。
カウンターの中にあるお気に入りの椅子に腰を掛けると、リリーは置いておいた本を手に取る。基本客がくるまで借りてきた本を読んでいる。
本を開き、いざ、読もうとした時だ。
――カラン。
扉につけた客を知らせるベルが小さく鳴る。リリーはすぐに本を置き、入口へ視線を向ける。
「――お店に置く花を探しているんだけど。今いいかな」
スーツをまとった青年はリリーを見て言った。
「もちろんです。ようこそドール・フィオーレへ」
リリーは優しく微笑んだ。
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スズラン(プロフ) - sana37さん» コメントありがとうございます!出す機会があれば使わせてもらおうと思います。 (2017年2月3日 8時) (レス) id: db1c4842a6 (このIDを非表示/違反報告)
sana37(プロフ) - 読ませて頂きました、これからのストーリーが気になります。是非うちの子も使ってください。 (2017年2月2日 23時) (レス) id: bd466cdcb4 (このIDを非表示/違反報告)
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