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そして迎えた放課後。
「…」
私が図書室に着くと、この男は眼鏡をかけて練習問題と向き合っていた。勉強する気はあるんだな。
昨日どこまでやったのか思い出しながら、此奴の正面に座る。鞄を雑に机に置く。
「遅かったな」
「…」
ちらりと私の方を見てから、また問題に向き直る。すでに放課から20分を過ぎていた。確かに遅かったな。
今の今まで教室にいた私は、どうにかしてこの勉強会を無くす方法を考えていたのだが、良策はひとつも思い浮かばず、のろのろと図書室に足を運んだのだった。
特に返事もせず、机にワークを広げる。
数分してから正面の男のペンを持つ手が止まった。
「なあ、これどうやるん。」
「どれ」
ぐっ、と身体を伸ばす。カチカチと音を立てながらペンでプリントを差す。反対側だからなのか見えづらい。
「ここは、」
そのまま顔を上げると、目の前数cmの距離に捏島の顔面があり、ばっちりと目が合う。わたしは思わず硬直する。
「う、わッ…」
「…なんやねん」
私の口から小さく呻き声が漏れる。こいつの明らかに不満そうな声と共に。
運動部のくせに白く透明感のある肌に整った顔、眼鏡の奥にある空色の瞳がやけに綺麗に、鮮明に見えた。
…同時にそんなことを思う自分が、きもちわるくなったけど。ふう、と息をついてからもう一度下に目線を戻す。
「…これ、前の問題と同じ…ってか前の問題も間違ってる…」
「…嘘やろ。」
「…根本から違うけど」
「もう意味わからへん〜。」
大きくため息をついてペンを机に置いたこいつは、椅子の背もたれに全体重を預け喚いている。
私も机に肘を着き、捏島を見やる。
数秒したところでぐりん、と何かを思い出したかのように顔を上げたこの男は、その唇を開いた。
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らいらい - 完結お疲れ様でした!されるのでは最後雑な終わり方ってマジで言ってます?え?皮肉?(p*・ω・)p ガンバッテ (2021年1月22日 6時) (レス) id: f6115359b4 (このIDを非表示/違反報告)
みかん餅(プロフ) - はじめまして。完結お疲れ様でした(´˘`*) タイトルに引かれてからしおりを貼ってずっと更新を楽しみに読み進めておりました。作者様は雑な終わらせ方とおっしゃってますが私はとても好きな完結だと思いました!いい話が読めて幸せです。これからの活動も応援してます! (2021年1月11日 1時) (レス) id: f0120270df (このIDを非表示/違反報告)
キキル - あぁぁ、好きだ。タイトルから分かる、神作品感。本当に。更新頑張って下さい! (2020年12月19日 23時) (レス) id: 4b53e11b6e (このIDを非表示/違反報告)
#よにん。@str48&変人系カップル&踊り子(プロフ) - 応援しています! (2020年12月19日 17時) (レス) id: 8fee56dc4c (このIDを非表示/違反報告)
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