恋する群青 (ページ10)

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「え、何で？」

「最近やけに仲良いから」

「そう？部活が一緒だからそう見えるだけじゃない？」

「…………」

「海の事は友達としては好きだよ？」

「…ふーん」

「何よ、」

「いや、別に。もし好きなら止めとけって言おうと思ってただけ」

何それ。どういう意味？

「あいつが優しくするのはお前だけじゃねぇから」

「…は？」

「自分だけに優しくしてくれてるって勘違いしてんなら違ぇよ、って忠告しようと思った」

そんな事は分かってる。

拓弥に比べたら私は海と友達になって日は浅いけど、どんな人にも分け隔てなく接していて男女関係なく慕われているのは知っている。

「拓弥に言われなくてもそんなの分かってるよ」

「ならいいけど」

そう言ってまた教科書に視線を移す拓弥。

何なの？

何だかいつもと様子が違う拓弥を不思議に思いながら見つめていると、部屋の扉が開いた。

「オガくん来たよー」

「お邪魔しまーす」

「…………」

「…………」

「え、何この空気」

「何かあったのか？」

「いや、別に何もないよ」

一階にいたユカが海を連れて部屋に戻って来た事で、私と拓弥の間に流れていた微妙な雰囲気が断ち切られた。

「ちょ、海こっち来て。これ分かんないんだけど」

「Aさん…俺部活帰りなんだけどちょっとくらい休ませるとかない訳？」

「私には休んでる暇はないの！このままじゃ補習回避出来ない！」

「はいはい」

そう言った海は私の隣に座り「どこ？」と問題集を覗き込んでくる。

「ここなんだけど…」

「あーここね。これはー…」

さすが小笠原先生。

本当に同い歳なのか疑う。
先生の授業より分かりやすいって凄い。

この後も海にみっちり勉強を教えてもらった私達。
そのおかげもあって全員補習を回避出来て、無事夏休みを迎える事が出来た。

この時は拓弥の真意が分からなかったけど、これが彼なりの優しさだった事に私が気付くのはもう少し先の事だった。

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