恋する群青 (ページ9)

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高校二年の夏

ホームルームが終わって帰り支度をしていると、隣の席の海に声をかけられる。

「A、今日部活どうする？」

「うーん今日はパス！先にユカと拓弥んち行ってるね」

「そ、じゃあ俺ちょっと顔出してからそっち行くわ」

「うん、分かった」

もうすぐ定期テスト。
これが終われば夏休みだからと気合を入れ、みんなで拓弥の家に集まって勉強会をする事になった。

学年でも常に上位にいる海はテスト間近にも関わらず部活に行く余裕があるらしい。

後で合流する海を残し、ユカと一緒に拓弥の家にお邪魔して先に勉強を始めたけど…

「ねぇユカ、ここ分かる？」

「ん？どこ？……え、こんなの習ったっけ？」

「拓弥分かる？」

「わっかんねー」

「だよね」

「おい、だよねって何だよ」

勉強が進まない。海がいないと分からない問題ばかりで全然先に進めない。

「オガくんまだかな～」

「私ちょっと電話してみるよ」

携帯を鞄から取り出して、履歴から海の名前を見つけて発信画面を押す。

何コールかの呼び出し音の後「もしもし」と海の声が聞こえた。

「海？まだこっち来れない？」

『今学校出たからもうちょいで行けるけど…どうした？』

「小笠原先生がいないと勉強が進まないんです」

『んな事だろうと思ってたよ』

「待ってるから早く来て～」

『はいはい。分かったから待ってなさいって』

「はーい、先生」

電話を切ると、拓弥のベッドの上で携帯をいじっているユカが「何だって？」と聞いてきた。

もうすぐ来るって、と伝えると「じゃあそれまで休憩ー」と言って部屋を出て行こうとするユカ。

「あれ、何処行くの？」

「直弥にちょっかい出してくる」

"直弥"とは、拓弥の弟の事。
家族ぐるみで仲の良いユカは本当の弟の様に可愛がっているらしい。

ユカが部屋から出て行ったので、必然的に拓弥と二人きりになった。

手より口が動いていたユカがいないから部屋がやけに静かに感じる。

今のうちに海に教えてもらう所を纏めておこう、と問題集に目を通そうとした時、

「なぁ、」

静かに勉強していた拓弥が口を開いた。
目の前に座っている拓弥を見る。

「ん？何？」

「お前、海の事好きなの？」

「へ？」

唐突過ぎる質問に思わず素っ頓狂な声が出た。

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