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「自己紹介してなかったよね。俺、小笠原海。一年間よろしく」
そう言った小笠原くんへ自分も名乗ろうとした時、
「AAさんでしょ？」
「え、」
そう言えば…
あの時もさっきも私の名前を呼んでた。
接点がない小笠原くんがなんで私の事知ってるんだろう。
そんな事を考えていると、いきなり小笠原くんが笑い出した。
「な、何で笑うの？」
「いや…Aさんって分かりやすいなって思って…」
「…？」
「考えてる事全部顔に出てるよ」
ユカや家族に良く言われる事をほぼ初対面の男子に指摘された。
口を手で押さえながら未だに笑っている小笠原くんを横目で見ながら口を尖らせる。
「そんな笑わなくてもいいじゃん」
「ごめんごめん」
「でも本当に…何で知ってるの？」
「良くサッカー部の練習見に来てたでしょ」
「…へ？」
「一人で練習見に来る子珍しくて良く目に付いたから」
「……え、そうなの？」
「うん」
自分の知らない所で認知されていたなんて…
何というか…とても恥ずかしい。
「そんな恥晒してたなんて知らなかった…」
「……恥？何が？」
さっきまで笑っていた小笠原くんが、私の言葉を聞いた瞬間キョトンとした顔になる。
「え、だって…一人で見てるなんてガチ過ぎて気持ち悪いでしょ？」
「どこが？寧ろ俺は素敵だなーって思ってたよ」
一瞬、ドキっとした。
何今の。
「え、あ、そう…かな…」
「うん。他の子は友達引き連れてキャッキャしてたり、練習終わりに目当ての人に話しかけたりしてたけど、Aさんは一人で来て、ただ練習見てるだけでさ、」
「…………」
「こんなこと言うとアレだけど、他の子と違って本気なんだろうなって勝手に思ってた」
何故だか涙が出そうになった。
でもこんな所で泣くなんて駄目だと自分に言い聞かせる。
「この間も言ったけどさ、Aさんなら大丈夫だよ」
「え？」
「もっと好きだと思える人現れるって」
この間もそう言ってくれたっけな。
うん、
少し前向きになれそう。
「小笠原くんありが、」
「海でいいよ」
「え？」
「"小笠原"って長いし言いづらくない？」
「え、うーん…言われてみれば…」
「だろ？だから名前でいいよ。俺も名前で呼ぶからさ」
「じゃあ…海くん、ありがとう」
これが私と海の出会い。
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作者名：京 | 作成日時：2019年2月24日 23時
