恋する群青 (ページ5)

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「…………先輩、今頃楽しいキャンパスライフ送ってるのかな」

「…また始まった」

「私の事なんてもう忘れてるんだろうな…」

「Aもいい加減先輩の事は忘れて次の人見つければいいじゃん」

「うぅ～～そんな簡単に言わないでよ～～」

「あーもう、ごめんごめん！」

トボトボと歩く私の背中をユカが叩きながらそれぞれの席に向かう。

「はぁ…」

春休み中はずっとメソメソしていてあまり有意義な時間を過ごせなかった。

溜息をつきながら一番後ろの自分の席に着いて鞄を置く。

隣を見るとそこはまだ空席だった。
"オガくん"とやらはまだ来ていないようだ。

モテ男子が隣の席か…
他の女子に妬まれたりしないかな…

恐らく無駄だと思う心配をしながらぼーっとしていると、隣に人影が見えたと同時にふわっとあの時の香水の香りがした。

ハッとして反射的に香りがした方へ視線を向けると、そこには一人の男子が立っていた。

「一番後ろとかお互いラッキーだね」

「…え？」

「Aさん、元気そうで良かった」

「え、あ、うん…？」

そう言って私の隣に座った男子は確かにあの時の香りを纏っている。

という事は…

「…え、あの時慰めてくれた…？」

「あれ？気付いてなかったんだ」

そう笑いながら机に肘をついてこちらを見ている。

この人が"オガくん"であり、私の話を聞いてくれた男子だったんだ。

ユカが言っていた通り確かに端正な顔立ちをしている。

「あの時はどうも…」

「別に俺何もしてないよ」

「いやいや、みっともない所をお見せしまして…」

「ははっAさん面白いなぁ」

目を細めてクシャッとした笑顔を見せる彼。
なるほど…女子達はこの笑顔にやられるのか。

「あ、そうだ…」

「ん？何？」

思いがけず再会出来た彼に、渡さなければいけないものがある事を思い出した。

鞄をゴソゴソと漁って、ハンカチが入っている袋を取り出す。

「これ、ありがとう」

「ん？ああこんなの返してくれなくても良かったのに」

「いやいや！そういう訳には…ちゃんと洗濯もしてあるから安心して受け取って」

「それはそれは、わざわざどーも」

私の手から袋を受け取った小笠原くんが「あ、そう言えば」と思い出したように呟く。

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