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試合終了後、海と拓弥に呼ばれて部員が集まっている外の控え場所に向かった私達。
「あ、海と拓弥いた」
「ほんとだ」
ベンチに座ってスポーツドリンクを飲んでいる汗だくの海と拓弥を見つけて手を振ると、私達の姿に気付いた二人がこちらに向かって歩いて来た。
「よ、応援ありがとな」
「お疲れ様。はい、これ」
首にかけたタオルで汗を拭きながらそう言う海に手に持っていた袋を手渡す。
「ん?何これ」
「差し入れ」
「まじ?サンキュ」
袋の中身は、今日来る前にコンビニでユカと買ったエナジードリンク。
それを見て、拓弥が眉をひそめる。
「そういうのって普通試合前に渡すんじゃね?」
「いいじゃん気持ちなんだから!」
「ごめん、渡すタイミング逃しちゃってさ」
「まあまあ拓弥…せっかく買って来てくれたんだからいいじゃん」
「オガくんは大人だな〜誰かさんと違って」
「お前もガキだけどな」
「はぁ〜?何よ!」
いつもの如く幼馴染み同士の口喧嘩が始まった。
これを止めるのは不可能だからこうなったらいつも放っておく様にしている。
「今日結構色んな人見に来てたね」
「まあな、先輩達最後の大会だから」
「そっか」
二人の言い合いを聞き流しながら海と話していると、ある場所を見た海が「あ、」と声を出した。
「何?」
「あ、いや…」
言葉を濁す海を不思議に思いながら視線の先を追う様に見ると、
「あ……」
先輩、だ。
久し振りに見た大好きだった先輩は、高校生だった時より少し大人っぽくなっていて、私服姿がとても新鮮だった。
「A?大丈夫か?」
「え、?」
横にいる海に話しかけられて我に帰る。
好きだった先輩が目の前にいてびっくりしたけど、不思議と辛い気持ちになっていない事に気付く。
そっか、
私、自分でも気付かないうちに先輩の事吹っ切れてたのかもしれない。
「海、私もう大丈夫みたい」
「…そうか。なら良かったよ」
そう言って微笑む海を見て私も笑う。
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作者名:京 | 作成日時:2019年2月24日 23時