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 この関係をなんと呼ぼう。

 悲鳴嶼とAの付き合いは少なかった。何故って二人は鬼殺隊の双璧である。アホほど忙しい。もっぱら柱合会議の前後で近況を報告するくらいで、やはりプライベートに踏み込めたことがなかった。
 けれど二人は通じあっていた。と、少なくとも悲鳴嶼は感じている。いや卑猥な意味とかは一切なく。

 当たり前と言えば当たり前だが、お互いがお互いを最も信頼していた。Aの場合、己を除いて、という言葉は入るが。
 要するに、多少なりとも対等だったのである。


「物言いたげな顔をする」

 柱合会議の折り。
 ご息女から悲鳴嶼へ、一通の手紙が渡された。悲鳴嶼がいつぞやの任務で助けた少女からのものらしい。藤の家紋の家を通じ、ようやく恩人へ行き着いたものであった。

 巨大な手のひらにすっぽり収まった、けれど溢れんばかりの感謝の念。それをいつまでも見つめる(盲であるのに)悲鳴嶼に、Aが声をかけたのだった。

 大事ない、と返そうとする悲鳴嶼に、ガッ!!と衝撃が走った。
 アイアンクローである。
 体格差ゆえに額をつねるようなその動作の、けれど痛みはしかと伝わった。え?なに?

「痛っ」
「そうか痛いか。何よりだ」
「いたたたた……」
「調子に乗るなよ、悲鳴嶼行冥」

 パッと解放される。

 知らしめるようなワザとらしい不機嫌の気配。悲鳴嶼はバツが悪そうな顔でしょぼくれた。抱いたこの不安が、ややもすると傲慢であることには気づいている。

「鬼殺隊をお前一人で背負っているつもりか?」
「……いや」
「この私がいながら、お前が?」
「そうだな。すまない」
「期待されて、感謝されて、それは有難いことなのだから応えなければと思っている?お前の失敗ひとつで決定的に何かを駄目にしてしまうとでも?」
「思い上がりだった」
「そうだな。甚だしい」

 詰る口振りに自信も不安も萎れていく。
 こうやってドッシリ構えるAに比べたら、やっぱり私ってば頼りないのかもしれない、と素直に思う。

「命でも背中でも肩でも、私に預けていればいいんだ」
「そっ……」
「お前なら、まあいい。そのくらいの貸しなら返せるだろう」

 ……そんなプロポーズみたいなことある?

 このトキメキを以て、悲鳴嶼はAのTO(トップオタ)と相成った。
 無限列車での真実を話せないのはいい。けれど、心配くらいはさせてほしい。図々しくたって、おまえのことが大切なのだ。

 また出掛けているようだが、さて。悲鳴嶼は何事も起こらぬよう数珠をならして神仏へ祈った。
 行き先は、遊郭だったか。

 

開かれたるは五色幔幕→←ゝ



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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