20:仮眠室 ページ21
「へ?」
間抜けな声が聞こえた。それが自分の声だと気付くのに数秒掛かった。何故だ。何故、太刀川さんが?
私を斬ったの?
──〈トリオン体活動限界。ベイルアウトします〉
「太刀川さん、どうして」
太刀川さんは何も言わず、弧月を握り締めていた。訳がわからず呆然としていた時、聞いたことのない出来事が発生した。
──〈システムエラー発生、ベイルアウトできません〉
「は?」
光を放ってトリオン体から生身に戻る。混乱する頭の中、身体が後ろに倒れていく。太刀川さんがやっと、動き出し、私の腕を掴んだ。それによって尻餅を付かずにすんだ。
「…トリガーの異常?…なんでこんな時に」
トリオン体だったので気付かなかったが、学校にいた頃より、頭痛が酷なっている。いや、それより先にっ、トリガーが、何で?
太刀川「そんな状態で大丈夫なのか?」
「うるさいっ!…大丈夫です」
私が強がってそう言えば、太刀川さんは掴んでくれていた手を離す。途端に、力が無くなりしゃがみ込んでしまう。俯く。そして、頭痛と眠気が私を襲う。
「…嫌だ、眠るな。…まだ大丈夫」
太刀川「A、交代の時間だ。さっさと立て」
「…はい」
ゆらゆらと立ち上がり、基地に戻ろうとしたところで、視界が揺れた。気付いた時には太刀川さんに俵担ぎされており、気付いたときにはグラスホッパーで、ぴょんぴょんと本部の屋上まで移動していた。その間、恐怖しかなく、嫌だったけど太刀川さんに必死にしがみ付いていた。
「死ねよ、餅頭!」
太刀川「今のお前は使い物にならない。さっさと寝ろ」
「アンタには関係ないだろ」
太刀川「俺はお前の上司だ。関係あるだろ」
とん、肩を押され後ろに体重がかかり、一歩後ずさる。背に何かがあたり、振り向けば簡易的なベッドで、あぁそうかと状況を飲み込めた。
ここは仮眠室だ。私が来たくない場所である。少し暗くて、静かで、眠気が増幅されるような部屋。
「太刀川さんっ、ほんとに、いや、何です」
太刀川「知るかよ」
「一人は嫌」
そういう私など関係なく、仮眠室の扉が閉められた。
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ゆう - 続き気になるー!本当に面白いです!できれば更新していただきたい。 (3月17日 19時) (レス) @page29 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - ここで終わるのはもったいない…続き、気長に待ってますから (8月11日 14時) (レス) @page29 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Doll(プロフ) - 嫌だ! (2018年12月21日 14時) (レス) id: 637c8a3b3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋イノラ猫 | 作成日時:2018年9月2日 0時