7話 自慢話 ページ7
――――高尚であれ
――――高潔であれ
――――清廉であれ
弱みを見せてはならない。
威張ってはならない。
他者に施す者であれ。
他者に愛される者であれ。
Aの母はよくAにそう言い聞かせていた。
幼いAは意味がわからなかったが今思い返すと母はAに言い聞かせていた言葉が似合う人だった。
歳を経てその言葉の意味が分かるようになってから母はAの目指す理想の人となった。
強く気高い母は冒険者としても一流だった。西風騎士団の図書館にも母の逸話があるくらいに。
そんな彼女はとある任務の最中まだAが赤ん坊の頃、雨の中Aは拾ったそうだ。星拾いの崖でヒルチャールに襲われかけていたAを母が見つけたらしい。
その話からもわかる通りAは家族の誰とも血が繋がっていない。それでも亡き母はいつまでもAの目標だし、男手一つになろうと自分と弟を育ててくれる父を敬愛している。
何より血が繋がっていないと知っている今は目覚めないマルクはAを姉と慕ってくれる可愛い弟だ。
その話を聞いていたパイモンと旅人は少し申し訳なさそうにしていた。
そもそもなぜAの生い立ちの話をしていたかと言えば、パイモンがしきりにAのことを知りたいと言うからだ。
「……ごめんなさい、ちょっと話が重かったわね。でも違うのよ、そんな話がしたかったんじゃなくて単純に家族の自慢話がしたかったのよ……」
旅人とパイモンに悲しい顔をさせてしまったことに罪悪感を感じながらAは弁明をするように早口でまくし立てる。
その言葉に嘘はないが同時に2人のことを気遣っての言葉だ。
「そっか、素敵な家族だね」
旅人はそんなAの気遣いを察し優しい声で言葉をかける。
「……うん?つまりオイラと蛍はお前の家族のことを勝手に惚気られたってことか?」
「まぁ、そういう事ね」
Aの返事に拍子抜けしたようにパイモンはため息を吐く。
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作者名:コカゼ ナヅ | 作成日時:2023年7月10日 2時