3話 特技を活かす ページ3
―――休みが欲しい!切実に………!!
Aはその日朝から散々だった。
リサに未返却の本を探すのを手伝わされたうえ、Aの断れない性格を知った騎士が終わらない仕事の手伝いを頼んできた。
「A、頼みたい仕事があるんだ。ちょっと付き合ってくれ」
ガイアにそう言われ、Aは断る好きも無くモンド城外へと連れ出される。
「…終わってない仕事、まだあるんだけど……?」
「すまないな、この仕事が終わったらゆっくり休んでくれ。何時も世話になってる代わりに今日くらいお前の仕事は俺がやっておく」
―――私の残りの仕事は貴方が残してったモノよ!
と、叫びたいのをぐっと堪え前へ顔を上げる。
目の前には、意味の無いような鳴き声か音を発するヒルチャールがいた。
今、ガイアとAはヒルチャールの群れに囲まれている。
ガイアは軽く片手剣を降る。
Aも三叉槍を構え警戒する。
神の目を持つガイアが居ればAの出る幕など無いのだが、ガイアはわざわざヒルチャール退治の為だけにAは連れて来ている訳ではない。
「A、あいつらアビス教団について喋ったりはしているか?」
「……いいえ」
Aは、ヒルチャールの言葉を理解することが出来た。
図書館に奇声を発する少女がいるがその少女と違い、Aは学ばずとも幼少期から彼等の言葉が理解出来ていた。
そしてその理解できる範囲は歳を重ねるごとに深くなっていった。
最初は何となくだった。
しかしいつからか、ヒルチャールの声が意味のある言葉に聞こえるようになっていた。
以前、そのことをガイアにポツリとこぼして以降こうして、ヒルチャール退治に連れ出されていた。
――――本当は嫌なのよね……。ヒルチャールの声を聞いてると体が中心から痛くなるし。そもそも、ヒルチャールの言ってることって言葉にはなってても意味の無いことばかりだし。
三叉槍を振り回し、ヒルチャールを灰へと還しながら考える。
スライムや他の魔物が相手であればまだいいがヒルチャールを相手にしてるいる時Aは何時も体の痛みを覚えていた。
そのことをガイアに伝えたことはあるが、今しているのは自分にしか出来ないことだと、他の誰よりAが知っている。
故に仮にガイアが気を遣いAにこの仕事を頼まなかったとしても結局Aは耐えられずに任務に出てしまうのだ。
―――今日は帰ったら飲み明かしてやる!
疲労と体の痛みを感じるなか、そんなことをモチベーションにAは目の前の魔物達を屠っていくのだった。
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作者名:コカゼ ナヅ | 作成日時:2023年7月10日 2時