15話 気の所為であってくれ ページ15
教会の鐘の音がモンド城内に鳴り響く。
神を讃え崇め、毎日規則正しく鳴るその音を聞くと頭痛に見舞われる。
救いなのはそれが雨の日ほど酷くないということだけだ。
丁度正午を知らせるその鐘の音がなればモンドの住民は机に向けていた顔を上げ、座っていた腰を起こし一時の安らかな休息に向かう。
―――頭、痛い・・・
ガイアの居ない執務室でAは机に突っ伏す。
話し声が頭に響かないから良いかと思う反面誰かと話して痛みを紛らわせたいとも思う。
前までは気にならない程の痛みだった。
しかし
風魔龍と言えば、ジン達から聞いた話によると裏ではアビスが糸を引いていたという。
それが理由なのか、もしくは全く違う理由なのかAには知る由もない。
「どうしたんだ、今日は一段と顔色が悪いぜ?」
思い耽ているとドアを開く音と共にガイアが声をかけてきた。
いつもと変わらずの胡散臭い笑顔だ。
「ただの頭痛よ」
特に言ってはいないが一段と、なんて言われたあたり普段からこの鐘がなる時間に頭が痛くなるのはとっくに気づかれていたらしい。
―――いやまぁ、隠してないから良いけども。
あの日、ガイアに傍から聞けば告白にも思えるような言葉を吐いて以降結局ガイアとAの何が変わるわけでもなかった。
ただ少し、Aの気の所為かもしれないが。
「熱は・・・ないみたいだな。やっぱりあのアビスの一件が関わってるのかもしれないな」
「まぁ、今の所考えられるのなんてそれぐらいしかないわね。・・・ねぇ、ちょっと近くないかしら」
以前よりも距離が近い気がしなくもなくもない。
ガイアの指がAの額に触れる。
元素を用いて氷を扱う故か、はたまたガイアの言う通りAに熱があるのか触れる指は心做しかひんやりと冷たく熱を奪っていく。
ガイアは覗き込むように顔を近づけ視線がカチリと交差する。
「そんなことないさ。・・・あぁ、それともAはこれで意識するのか?それなら悪かった」
スっと身を引き冷たい指も離れる。
「意識してるように見えたかしら?疲れてるんじゃないの」
揶揄われていることを理解して頬が引き攣るのと同時に顔に熱が集まる。
心配してくれていたはずなのに結局そうやって最後に誤魔化すから私も軽口で返してしまう。
鐘の音はいつの間にか止み、頭痛は治まっていた。
―――けど、触れられた額が熱い・・・気がする
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作者名:コカゼ ナヅ | 作成日時:2023年7月10日 2時