12話 告白 ページ12
チクタク、と時計の無機質な音とペンの音だけが鳴る。
ガイアも珍しく真面目に書類と向き合っていて何か喋る様子も無く、Aも普段一人で書類仕事をしていたからか特に話しながら仕事をする訳でもなく執務室は人がいるとは思えないほど静かだった。
―――リサさんに揶揄われたから少し気まづいわね
ちらりとガイアを見る。
窓をから差し込む光を背に浴び真面目に仕事をするガイアはそこだけ見れば絵になる。
酒飲みやご老人には安心して孫娘を預けられると有名だ。
普段自由奔放なガイアを見ているAには家庭に入っても上手くいかなさそうというなんとも失礼な偏見があるが。
―――相手がアンバーなら、リサさんに言った言葉を冗談で済ませられたのに。……相手が悪かったわ
「視線が痛いな。何か言いたいことでもあるのか?文句なら勘弁してくれよ?普段仕事を任せ切りな分こうして珍しく真面目にしている訳だし」
「普段真面目じゃないっていう自覚があったようで何よりよ。特に言いたいことはないわ。……少し気が散って集中力できてなかっだけよ。気になったのならごめんなさい」
目が合うと自ずと逸らしてしまう。
少し言葉に棘があったかもしれないと反省してAは書類に取り掛かる。
しかし、今度はAが視線を感じ落ち着かない。見ていた分、見るなとは言えないがこうもあからさまに視線を感じると何も言わずにいられない。
「今度は何かしら?」
「今日は何か様子が変だな?目が合わない。珍しいな、お前は普段から人と話す時目を逸らして話すことないだろ。何かあったか」
よく見ている。Aもガイアの下で働いてそれなりに経つのでガイアが人の機微に聡いことは知っている。
しかし、それにしても目敏いというか。
―――でも、言葉は心配してるようなのに相も変わらず目が冷たい。
目が合わない、指摘されたからか何となくAは今度は目を逸らさずにガイアの顕になっている左目をじっと見つめる。
普段でこそ剽軽で掴みどころがないが、自分に対して優しい態度をとっている時こそガイアの本音が垣間見えている気がした。
何故、こんなに態度と瞳に温度差があるのか。
―――今の今まで気づかないように、気にしないでいたけど。
「ねぇ、私は貴方のことが好きなのだけど貴方私の事嫌いでしょ」
Aの口から出た言葉は言った本人でさえ驚く程確信めいていた。
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作者名:コカゼ ナヅ | 作成日時:2023年7月10日 2時