1話 騎兵隊隊員の彼女 ページ1
「あの男!一体何処へ行ったのよ!」
長い髪を靡かせて少女、A・クラリスは西風騎士団本部を駆け回る。
几帳面、生真面目、堅物の彼女は自分の上司に毎度仕事を押し付けられては上手く逃げられていた。
「今日という今日は許さないわよ……!!」
そう言いながら城内も捜索しようと勢いよく騎士団本部の扉を開ける。
「おっと…、そんなに勢いよく戸を開けたら危ないぜ?A」
扉を開けた目の前にはAの探し人、ガイア・アルベリヒがいた。
「!……やっと見つけた!貴方今まで何処で何してたのよ!見つけたからには逃がさないわよ、さぁ!今すぐ私と一緒に仕事部屋に戻って貰うわよ?そして放置してた書類全部片付けて貰うから!!」
Aはそう言いながらガイアの腕をしっかり掴む。
また逃げられては堪らない。兎に角有無を言わさず仕事へと連れ戻す。
ガイアは出会い頭のマシンガントークに少し気圧されつつも、上手くこの場を逃げ切る策を考えていた。
書類仕事をしたくない気持ちもあるが何より、先程発破をかけた旅人達の様子を探るためにも、今仕事部屋にこもる訳にも行かないのだ。
恐らく書類に向き合いたくない気持ちが大半だが。
「すまないな、俺はこの後
色々考えては見たが取り敢えず、ガイアは包み隠さず言っておくことにした。
「……えっ」
ガイアはA・クラリスという人間をよく知っている。
故にここは変に言い訳せず、真摯に訴えれば負けてくれることも理解している。
「そ……そうなの?」
Aは生真面目で任された仕事は必ずやり遂げる人間だ。というかそれ以前に生来頼まれると断れないという性質の為、少し困った表情で頼めば嫌と言えない。
―――もしかしたら、本当にそういう仕事かもしれないわよね……。ガイアって私達の知らないところで動いてることが結構あるし……。
「〜〜!!わかったわよ!やるわよ!今回だけよ!」
「……あぁ、ありがとう。助かったよ」
そうして、Aは今回も体良く仕事を押し付けられたのだった。
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作者名:コカゼ ナヅ | 作成日時:2023年7月10日 2時