31. 僕が生きる理由 ページ31
「あーあ、また失敗か」
僕は完全に治っている左手首に憂いの視線を寄せて言った。
これで失敗するのは1000回目か。
「1000回祝いでもするか」
この世界に嫌味を込め鼻で笑うが、乾いた声だけがこの殺風景な部屋に響き、それ以外は何も残らなかった。
次はどうやって死のうか。
これまで何度も色々な方法を試してみたが、気が付けば元に戻っていて、何もダメージを受けていないように健康な身体に戻っている。
ある日は20階建てのビルの屋上から飛び降り、運良く頭から落ちたものの、目が覚めた時にはたんこぶが出来ていただけだった。
そしてまたある日は一日中天井からぶら下げた縄で首を吊っていたが、何時間経っても意識ははっきりとして、全く苦しくならなかったので自分の驚異的な肺活量に驚きつつ縄を切った。
そう、僕はこれまで何度となく自 殺を繰り返して来たのだが、これといって自分にダメージを与えることができないでいたのだ。
「うわっ!またやったの!?」
声がして後ろを振り返れば、怒りというか、呆れた顔を浮かべた白澤の姿があった。
「またとは何だ。こっちは真剣に悩んでんだぞ」
少し頭にきたので眉間にシワを寄せて言葉を返す。
「そんなことに真剣になるなよ」
今度は怒った表情は一切なく、ただただ呆れたと言わんばかりの顔つきでため息をついた。
「大体何が不満でそんなに死にたがるんだよ?お前には友達もいるし、こんな立派な家もある。しかも癪だけど女の子にもモテるだろ。こんな人生のどこに嫌気がさすところなんかがある?」
「友達と言ってもお前くらいだろ」
「ま、そのたった一人の友達のためにも死にたがるなよ」
「お前、男なんかはいるだけの存在じゃなかったのか?」
「友達は別だろ?」
そう言ってそいつはにやりと笑った。
そう言われたらNOとは言えない。
俺が死にたくても死にきれない理由はきっとこいつのせいだろう。
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ラーミン。(プロフ) - 手品玉さん» ありがとうございます!期待にお応えできるように努力していきます! (2015年8月10日 17時) (レス) id: 99f7bb834b (このIDを非表示/違反報告)
手品玉(プロフ) - ラーミン。さん» それでも待ってます!頑張ってください! (2015年8月10日 13時) (レス) id: bbcea6223d (このIDを非表示/違反報告)
ラーミン。(プロフ) - 手品玉さん» 返事が遅れてしまい、すみません…。そうですね!それを考えていませんでした!これからはそうします!ですが、ネタがあまり思いつかないので、できるだけ更新しますが、毎日とはいかないかもしれません… (2015年8月10日 0時) (レス) id: 99f7bb834b (このIDを非表示/違反報告)
手品玉(プロフ) - ラーミン。さん» しばらく更新しないんですか...余計なお世話ですが、占ツクのアプリはお使いにならないのですか? (2015年8月4日 10時) (レス) id: bbcea6223d (このIDを非表示/違反報告)
ラーミン。(プロフ) - 手品玉さん» 前作でも今作でもコメントしてくださり、ありがとうございます!そうですか…!ではこれからもそう言っていただけるように頑張っていきます!! (2015年6月6日 23時) (レス) id: 9562c1173e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラーミン | 作成日時:2015年3月29日 1時