【鬼灯の冷徹】白澤様はあなたと【短編集】

29. 無防備な君に恋をした ページ29

僕が好きな人は、誰に対しても無防備すぎる。

同棲とか異性だとか関係ないという考えを持っているのか、男の前でも普通に着替えようとする。

良い様に言えば誰に対しても平等に接しているが、逆に悪い様に言えば誰にでもスキがあり過ぎて、いつ襲われても文句は言えないような行為だ。

「今からちょっと寝るんで、30分後に起こしてくださいね」

そう言ってAちゃんは僕の部屋のベッドに寝転んで、布団の中にくるまった。

正直、彼女のその行動に驚きはしたものの、しばらくすると寝息が聞こえてきたのでそのままにしてあげようと思った。

最近亡者の人数が増え、地獄も大変らしい。

これは僕の大っ嫌いな一本角が言っていたことなのだが、なかなか休みをとることも難しく、働き詰めの鬼が多いんだとか。

だからそんなブラック企業の代表と言っても過言ではない地獄で働いているAちゃんも、きっとあまり寝る時間がないのだろう。

「可哀想に……」

女の子の肌にとって寝不足は一番の敵なのに、こんなにくっきりと深い隈がつくまで寝てないなんて。

一度あの仏頂面を殴ってやりたい。

そんな衝動に駆られるが、力で張り合っても負けてしまうだけだと分かっている。(本当は分かりたくもないけど)

Aちゃんが寝返りをうった音ではっと我に帰った。

可愛らしい横顔と、いつもは気にしすぎなはずのぴったりと切りそろえられた前髪も寝返りをうつたびに乱れ、綺麗な太過ぎず細過ぎない眉毛が見えている。

いつもならその前髪に触れるくらいできるのに、手を伸ばせば届くことに、僕は何故だか戸惑っていた。

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